寝起きの福荒

逃げるように目を覚ます。
さわやかな朝を妨げる不快感の原因である汗は俺の全身をくまなく汚していて、こんなことなら昨晩のシャワーを今朝に回すべきだったと後悔の念すら覚える始末だ。

「…気分わりィ」

白いシーツの上でブランケット一枚をかけ、着ている物は短パンにTシャツという夏の寝床の上で本心を呟きながら、視線を右側にずらせば、目にはいるのは同学年の恋人の姿。
クソ暑い夏だろうが凍えるような冬だろうが変わらない寝顔が無駄に安心感を沸き立たせてきて、俺はさっきまで見ていた夢を無理矢理脳内から追い出して福チャンの寝顔に没頭することにした。
濃い眉、眠っているはずなのに微妙に硬い表情、全てが俺の物だという実感は3ヶ月がすぎた今もなかなか沸いてこない。

「福チャン」

呼びながら、金髪に指を這わせる。
さらさらとした指通り、しかし一本一本が堅く鋭い髪質は、まるでライオンのたてがみだ。
百獣の王ならぬ、箱根の王。
絶対強者の群を統一する、誰よりも強い存在。
そのくせプライベートは優しくて、でも強引で意外と甘いものが好きで。
あまり知らない福ちゃんの一面を知っている優越感が、俺をわがままにさせる。
眠っている福ちゃんの唇に、自分のそれを触れるか触れないかくらいに近づけて、少しはっきりした声で告げた。

「おはよォ、福チャン」

間近で開く双眼、起床3秒で意識を覚醒させた福ちゃんは目をぱちくりさせながら言う。

「…荒北、近くないか」

「いいんだヨ、サービスだサービス」

「嬉しいモーニングコールだ、ありがたく受け取ろう」

そりゃどうも、と笑いながら朝一のキスを交わす俺たちの間からは、いつの間にか夏の暑さは消え去ってしまったようだった。



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