荒今

・初荒今

・呟きをご覧頂ければご理解頂けるように、目覚めました乙

・マイナーとか言わない約束


野獣荒北、そんな風に呼ばれている俺の恋人は確かに野獣に相応しい仕草や表情を見せることが多い。
学校や学年、同じ物より違う物の方が多い俺たちが会える数少ない時間の間に何度か見せる獰猛な笑顔、どんな事も見透かすような鋭い視線、そんなものを思い出す度にああやっぱりこの人は獣だ、と呼び名に納得するのは何度目だろうか。
背中に回された腕と目の前にある首筋に全神経を集中させれば頭に浮かぶのはそのくらいのことで、唇が重なればそのことさえも水に溶ける砂糖みたいに掻き消えていく。
キスするとき、目を閉じることはあまりない。
荒北さんのベッドの上で、誰よりも近い距離、荒北さん以外の誰とも味わったことのないほどの距離で見つめる黒い瞳は本当に綺麗で、目を閉じる気が起きないのが本音だ。
触れるだけのそれが僅かな吐息と熱い舌を伴って深く侵すそれに変わる瞬間、隠しきれない加虐心が黒に混ざるのをきっと本人は知らない。

「、っ、らきた、さん」

「久しぶりの俊チャン、おいしい」
俺は食い物ですか、と抗議する前に再び降ってきた唇とシャツを脱がす手つきに言葉を封じられる。
今回は直接会うのが四ヶ月ぶりとかなり久しぶりなせいか、やたらとキスが多い。
こう言うと俺が荒北さんとキスするのを嫌っているように聞こえると思うが、本当は嫌いじゃない。
ただ途中で酸素が足りなくて、苦しんでるところを見られるのが嫌なだけだ。
舌を絡めて、上顎を擦って、歯茎から歯から何もかもを抉るように舐められてようやく離れた唇から引く糸をぼうっと眺める俺の頭には、もう荒北さん以外の声は聞こえない。

「ナァニもうギブアップ?」

「…冗談、やめて、くださいよ」

まだだ。
四ヶ月分の補充が、この程度で終わるはずがないじゃないか。
欲に染まった目をした荒北さんと、見慣れない天井しか映らない視界で必死に伸ばした腕は、きちんと荒北さんの頬にたどり着いた。
触れた肌は僅かに熱い。
伝わる体温が、かち合う視線が、なにもかもが俺を掻き立てて止まらない。

「喰らい尽くしてください、荒北さん」

俺の、愛しい人。
頬に当てていた手に荒北さんの手が重なる。
触れあう箇所が増えるほどに、狂ったように荒北さんを求める俺にはもう、枷なんて残っていない。

「かわいいネ、オリコウチャン」

「その呼び方、やめてくださいよ…」

「ヤダ」

会話はここまで、と言いたげに近づく体を、最愛の存在を受け止める覚悟を決めて、俺はゆっくり目を閉じた。




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