福荒(初期)で軍パロ

・弱虫ペダルより、福富寿一×初期北

・軍パロ

・初期北は参謀、福富は大尉



この世の地獄絵図が目の前にある。
燃えさかる炎は人も植物も敵も味方も関係なく焼き尽くし、その命を容易く奪ってさらなる獲物を求めて進行する。
何もできない、なんてレベルはとうに超えた。
今はもはや、何をすればいいかさえ分からない。
僅か5分で終わる電撃作戦、その結末がこんなものだとわかっていたならば、と今更後悔してもどうにもならない。
俺は間違えたのだ。
決定的に、致命的に。
赤黒く全身を焼けただらせ、痛みにうめく味方に何もできないまま、ただ走る。
走って、走って、たどり着いた自軍の参謀の部屋に、会いたかった人物はいた。

「っ荒北!!」

「…あ、福チャァン」

襟袖に輝くのは参謀の証であるピンズ、俺の軍の作戦立案者である荒北靖友はたくさんの資料が散らかる部屋で仮眠を取っていたらしく、気だるそうにベッドから上体を起こし返事をした。
いつもなら優しく声をかけてやるところだが、今日はどうしてもそんな気になれない。

「何故、あんな作戦を
あんなのが、あんなのが許されるとでも」

ベッドの枕元に立って、こんなに近くにいるにも関わらず、言葉は巧く出てこない。
言いたいことが纏められない。
まるで子供のように感情をまくし立てることが、今の俺の精一杯なのだ、情けないことに。

「許されたから実行されてんの。
可哀想な福チャン、地獄の入り口見てきたんでしょ?」

ああ、きっと荒北もこんな作戦を好きで立てたわけではないのだ。
伸びてきた荒北の腕に抱きすくめられ、その体温と匂いにどっと安心感が押し寄せる。
きっとこれっきりだ、これからはもうあんな作戦はきっと無い、荒北があんなものを肯定するはずがないのだ。

「でもよかったあ、あの作戦なら福チャンだけは絶対に生き残れるからネ」

そう信じていたが故に、その一言に意識が凍りついた。
俺だけが生き残る、それを分かっていて荒北はあの悪魔のような作戦を立て敵味方を巻き込んで、俺という生き残りを産みだしたと。
そうだとでも言うのか、そう要るか居ないかも分からない神様に問いかける。
答えはない。

「福チャン、俺はネ、
福チャンとこの世界に二人っきりになれればそれでいいんだヨ」

ただ俺を抱きしめる荒北のぬくもりだけが、俺の質問を是と返していた。




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