朝ご飯と黒荒

・箱学黒田くんと洋南荒北さん

・黒田くんはきっと料理ができると信じてる

・付き合ってる




前もって昨晩から冷蔵庫に入れていたせいで完全に冷え切っているバッドを取り出せば、中にある卵液と食パンがゆらゆらと揺れる。
柔らかくかけていたラップを外せば、途端に溢れてくるバニラエッセンスの香りに思わず口角が上がってしまった。
それと同時に、朝はパン派の荒北さんのために散々研究し尽くしたこのフレンチトーストを焦がすなんていう失態をしないようにと改めて気が引き締まる。
温めたフライパンにバターを引いて浸したパンを置けば、じゅわぁという心地よい音が耳に響いた。
料理は嫌いじゃない、むしろ好きな部類に入るかもしれない。
和食よりは洋食の方が作る回数は多いが、荒北さんとの食事はからあげがほとんどなこともあって和食が多いため、こうして洋食の朝ご飯を作るのは久しぶりな気がした。
レタスを散りばめ、トマトやパプリカで彩りを加えたサラダにお手製のドレッシングをかけたところで香ばしく焼きあがったフレンチトーストを取り出し、新しく置いたフライパンに卵を割り入れる。
軽く水を入れふたをして、1分後には少し固めの目玉焼きが出来上がっているはずだ。
フレンチトーストのフライパンを洗い終えた俺は手早く濡れた両手を拭うと、隣部屋の荒北さんの寝室へ足を進める。

「荒北さーん」

返事はない。
さっぱりした青色の掛け布団に包まれた体はぴくりとも動かないまま無防備な寝顔をさらしている。
少し視線をずらせば白い肌のあちらこちらに見える鬱血痕に無理をさせたかと罪悪感を感じながらも、枕元に立つ俺の心境はこの人を困らせたいといういたずら心のほうが勝っていた。

「かわいい」

そっと呟いても寝息は一切乱れない。
遠慮せずに首筋に噛みつけば、ん、とむずがるような声が聞こえて笑いそうになった。
口を離せば、シャツでは隠せない場所に一つ、赤い新しい痕。
いたずら完了、とばかりににんまりとほくそ笑んで、少し大きい声で呼びかける。

「荒北さん、朝ですよ!」

「んー…んん…」

「ああもう布団被らない!ほら起きる!」

「だりい…ねみぃ…」

「朝ご飯にフレンチトースト用意してますから!ね?」

「…ナラァ、起きる…」

「はいはい、起きないと大学遅れますよ?」

くああ、と体を伸ばすその姿は目覚めたばかりの猫そのものだ。
そんな寝ぼけ眼でようやく上体を起こす荒北さんの手を引いて食卓へと誘う俺の笑顔の理由に荒北さんが気づくのはきっと、もう少し後。





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