黒田くんと初期北さん

・初期北誘い受け黒初期北

・黒荒前提



俺が知っている荒北靖友さんは、とにかく野獣の性格をしたような荒々しい人格の人だ。
目の前の敵はつっかかってこようものなら食らいつくし、どんな匂いでも嗅ぎ分ける。
例え同期だろうと、後輩だろうと、先輩だろうと自分とそのチームを舐めてかかってくる人間は許さない。
が。
野獣という呼び名が誰よりも相応しい俺のもっとも尊敬する先輩はしかし。

「くーろだチャアン」

何故か俺の部屋に入り込み、猫なで声を出しながら、俺の胴体や腕にその細くしなやかな体を擦り寄せてきている。
誰だこいつは、と叫びたくなるのだけれど、荒北さん特有の細い目や異様に痩せている体つきを感じてその言葉ものどを過ぎることなく消えていく。

「あ、あの、荒北さん」

「靖友って呼んでヨ、さんなんてかたっくるしい物取っちゃってサ」

ネ?と首を傾げて顔を寄せる荒北さん―もとい、靖友さんが可愛いかと聞かれれば全力で頷く。
手の甲まで伸びている両腕の服の裾なんてもうかわいくてかわいくて仕方ない、いつもの荒北さんとのギャップも相まって魅力も倍増、といったところか。
いや、これだと荒北さんはかわいくないみたいな意味合いになってしまうので訂正しておくが、靖友さんと荒北さんはまた違った意味での可愛さがそれぞれあるのだ。

「…で、靖友さん」

「ナァニ?」

「近くないですか」

部屋に入った当初から思っていたことを口に出せば、靖友さんの顔が喜色に染まる。
どういったわけか、靖友さんと俺との距離は今現在の時点でもはやゼロに近い。
俺にまたがって首に手を回し、まるでその先へ誘うように頬を撫でる白い指先に、はっきり言って理性が危ないことをこの人は知っているのだろうか。
その問の答えは、以外にもすぐに提示された。

「近くしてんノ」

「う、あっ!?靖友さん!?」

状況を楽しんでいるかのような囁き。
直後、耳朶を襲った暖かく濡れた感触に驚くのもつかの間、ぐり、と押しつけられた下腹部の硬さに嫌でも体が反応する。
悲しからずや男の性、なんて悠長に構えている暇はない、この人を止めなければとわかっているのに。
目前の体を、退かせない。
退かせる気が起こらない。

「楽しいコトしようネ、黒田チャン」重ねられた唇は、すぐに舌を絡めるそれへと変化を遂げる。
顔を赤くし、呼吸を乱しながら俺のズボンへ手を伸ばす靖友さんから解放してもらえるのはいつになるのだろうか、そんなことを頭のどこかで考えながらも俺は靖友さんの細い体を無機質なカーペットの上に押し倒すのだった。





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