荒黒

・唐突に黒田受けが描きたくなったので突然の荒黒(初)



額を伝う汗が心地悪い。
練習後ということもあってお世辞にもきれいとは言い難い体は両手を縛られただけで簡単に動かなくなった。
辛うじて自由な足の上には動きを封じるように陣取る荒北さん、もはや完璧としか言いようがない布陣。
逃げ出す気を失って、覆い被さる荒北さんの頬に手を伸ばせば、意外と滑らかな肌と指先が触れてどうしようもない感情に包まれる。

「逃げねェの?」

「…何ででしょうね」

質問を質問で返せば、目の前の口角が妖しげにつり上がった。
憧れて、憧れて、その果てに一方的な恋愛感情を抱いた相手にこんな行動をとられて嬉しいのか、と聞かれれば肯定を示すのが当然だろうが、完全に混乱した頭はまだうまく状況を飲み込めていない。
そうだここで逃げるべきなのか、と察した脳の一部が信号を出しても体が反応するのか、それさえ怪しい今の状況で、俺は無意識に荒北さんの後頭部に手を回しその頭を抱え込むように抱きしめていた。

「何してンの」

「こう、したかったんで」

ただ本能の赴くままに柔らかく掻き抱いた憧れの体温は暖かくて、いい匂いがする。
シャンプーの匂いなのか、荒北さんそのものの匂いなのか、真偽は確かではないけれどまるで服用したことのない精神安定剤のように心を落ち着かせてくれる優しいその匂いに静かに包まれた。
しばらくして背中に回ってきた荒北さんの両手は、部活中に見ていたそれよりもいささか細い気がしないでもない。
ちゃんと食事をとっているのだろうかと心配になるほど細い、しかしうっすらと筋肉の着いた腰に手を這わせればかえってくる、甘えるように頬に落とされたキス。

「荒北さん
俺、荒北さんがすきです」

「そうかヨ」

「荒北さんになら、何されてもいいです」

残念ながら同じ言葉は返ってこない。
が、言葉は無くとも、今度は唇に落ちてきたキスと優しく制服のボタンを外す指先が、荒北さんの心を伝えてくれているようだった。




後輩喰い荒北さんうまい…

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