洋南荒北と箱学黒田 3

・箱学三年黒田→洋南荒北←洋南金城

・みんな付き合ってない

・荒北さんは黒田くんの愛に気づいてない
・荒北さんは福ちゃん厨(福←荒)


荒北と関係を持ってから二ヶ月が過ぎたある日。
大学の講義を終え、快晴の空の下、部活までの時間を潰そうとアパートへの帰路についたところで、その電話はかかってきた。
電話帳には記載されていない人間のものらしく、液晶画面に所狭しと並んだ11桁の番号を一瞥して通話ボタンを押す。

『もしもし、洋南大学の金城さんで合ってますか?』

「そうだが」

若い男の声。
しかし遊んでいる雰囲気は一切無く、むしろ電話口からでも冷たい空気が流れ込んでくるような感覚すら覚える。

『どうでした、荒北さんの体は?』

「…お前、黒田か」

『さすが金城さん。
お察しの通り、俺は黒田雪成です。』

黒田雪成。
荒北の後輩で箱根学園の三年生、そして俺が人生で初めて妬みを抱いた人間。
こちらからは全く接触するつもりも、したくもなかった人物からの連絡は、俺の思考回路を乱すには十分な出来事だった。
なんとか平静を保っているフリを続けて言葉を紡ぐのを、今ほど難しいと感じたときはない。

「何の用だ、俺は話すことは何もない」

『まあまあ、福富先輩の代役を押し付けられてる者同士仲良くやりませんか?』

「断る、それに俺はあいつの代わりでは」

『代わりですよ、金城さん』

ぎり、と奥歯をかみしめた音は電話口に響いてしまっただろうか。
分かっていることを言われるのはいつだって癪に障る、が、今ほど苛立ったのは初めてだ。
あの行為は、愚直にあいつを想っていた俺に荒北が情けを掛けてくれたが故のものではない。
所詮は代役、都合のいいように動かされている。
事実、最中の荒北の目は俺じゃないどこかをみたまま虚ろに、形式的に名前を呼ぶだけで、欲は発散できても後に残る言いようのない寂しさは拭えないままなのだ。
じゃあどうすればいい?
今の関係を断ち切り、荒北を福富の元へ送り届けるのが人間として正解なのだろうか?
延々と迷走を続ける思考回路に割って入ってきた黒田の声は、先ほどより冷たく、暗く、何か重い感情をはらんでいるように思えた。

『俺はあの人がそうと望んだら何でもします。
人殺しだろうが、誰かの代役だろうが、荒北さんが望むなら全て受け入れて引き受ける。
だからというかなんと言えばいいのか―
荒北さんを俺以外の誰かに抱かせるのは、我慢ならないんですよ』

あの人は、俺のかわいいかわいい先輩なんです。
そんな声が聞こえた気がした。

『「だから、金城さん
貴方は邪魔です」』

黒田雪成の理想郷は、きっと本人にしか見えない。
しかしきっとあいつが夢見ている世界は俺と似通った独占欲まみれの地なのだろうと、マンションから落ちてくる植木鉢をまっすぐに見上げながら笑う俺は、もう何が正しいのかを完全に見失った哀れな人間に他ならなかった。




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