洋南荒北と箱学黒田 1

・箱学三年黒田→洋南荒北←洋南金城

・みんな付き合ってない

・荒北さんは黒田くんの愛に気づいてない

・荒北さんは福ちゃん厨(福←荒)


寝覚めはいつも通り、時間を気にしないゆったりとしたそれだった。
箱根学園の男子寮の一室、二人で眠るには狭いベッドで目覚める朝はいつもこう。
節々が痛む体を小さく伸ばしながら、いつもと違う天井を視界に捉えてから隣に後輩の体温があるのを確認して、そこから薄暗い室内で手探りにケータイを探す。
昨晩どこに置いたか、疲れきっていた体と頭はそれすら覚えていないらしく、頭は枕に埋めたまま適当に右手をあちらこちらに伸ばしてみる。
しかしその捜索も、ベッドフレームであろうものに指先が触れた瞬間に手首を掴まれ途中でやめざるをえなくなった。

「おはようございます、荒北さん」

「…オハヨォ」

俺の右手を掴んだのは言うまでもないが、つい先ほどまで隣で爆睡していた黒田だ。
疲れがとれていない俺とは対照的に爽やかな、それでいてどこか影を感じる笑顔、その視線が捉えるのはベッドサイドに放り投げられている俺のケータイ。

「昨日夜中鳴りっぱなしだったんですよ?荒北さんのケータイ。」

「マジでぇ?気づかなかった」

これは本当だ。
相当疲れていたのだろう、決して小さくないメールや電話の通知音を聞き逃すほど衰えてはいない自信がある。

「まあ、荒北さんが俺の下で喘いでるときだったんで仕方ないですけど。」

前言撤回、そこは気付いてもいいだろ俺。
相当そっちに集中してたのか、それともほぼ意識がトんでたのか正確なところは知らないが、とにかくほぼ想像できる着信履歴を確認するためにケータイを取る。
と同時に、掴まれていた右手を強く引かれてまたベッドの上に縫い付けられた。
覆い被さる黒田の表情は、明かりがほとんどない夜明け前の室内でも分かるほどの苛立ちと加虐心に満ちている。
その感情を露わにした顔に逆らえないまま奪われたケータイのロックを解除する黒田を下から見ることしかできない。

「金城さん、相変わらずですね」

「過保護なんだヨ」

やはりそうか、と頭のどこかで冷静な結論を導く。
金城は大学の練習が終わってからほぼ毎日飯を作りに来てくれるのだが、今日のように部屋にいない日はこうして連絡攻撃を浴びせてくるのだ。
黒田と俺は付き合ってはいない、ただお互いの欲を発散させるだけの関係であり、更に言うなら俺と金城の間にも当然そんな繋がりがあるはずもない。
のに。

「、っ」

首筋を走る痛みに顔がゆがむ。
何の予告もなしに濃い痕を付けようと噛みついてきた黒田の体を受け止めながら、訳が分からないと口に出さずに悪態をつく。
セフレならこんな跡を残すような行為は要らない、が、黒田は極端に見える場所に痕を残したがる。
そしてそれを見て満足そうに笑うのだから、俺には何が楽しいのか甚だ理解できないのだ。
金城も金城で、何をそんなに必死になって俺を保護しようとしてくるのか―
理解できないことに苦痛を覚えたりはしない。
けれど、何かもやもやとしたものを心の内に抱えたまま、潰れてしまえと言わんばかりにきつく抱きしめてやった黒田の体は温かくて、俺と同じにおいがした。




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