福荒(豆腐メンタル)

・弱虫ペダルより、福富寿一×荒北靖友

・荒北が実は豆腐メンタルだったらというIF設定



口が悪く、態度も悪く、あまのじゃくで実は少し照れ屋で、誰よりも頼れるチームメイトであり、かけがえのない恋人。
俺、福富寿一にとって荒北靖友はそんな存在であることに間違いはない。
荒北は俺をゴールまで届けるために誰よりも早く運び、そして俺は託された願いを達成させるために全力を尽くし、頂点を手にする。
お互いに支え合うからこそ成立するその関係を心地悪く思ったことは一度もない、ましてや縁を切りたいなどともってのほかだ。
信頼し、お互いを知り尽くしたが故に生まれるその絆は、しかし。
荒北を知らなかったが故に大切な部分を見落とした俺の、ただの自己満足ではなかったのか。

―福チャン

汚い字だ。
100人に聞けば100人がそう感じていると答えるであろう乱れた荒北の筆跡は、プリントでもよく見かけるものに間違いない。
荒北の自室の机から見つかった、荒北愛用のボールペンでルーズリーフの束に綴られた文字、否、あいつの感情の塊は、もはや受け止める度に心臓が痛くなってくる。
『今日もインターハイが近けェせいで追い込み練習
余裕で走るフリすんのが難しい
福チャンを運ぶのが、俺でいいかわからねぇ』

日付が書かれているわけでもない。
ただただその日の練習内容から始まる書き込みは、奥に進む度にその内容を濃くしていく。

『逃げたい
努力はした、でもこれで足りてんのか
怖い
怖い 怖い 怖い怖い怖い怖い』

『逃げたい
助けて、逃げたい
押しつぶされたくねぇ
苦しい』

インターハイに近づくごとにのしかかる重圧、エースアシストの責任。
それをひた隠しにしていた荒北の何を、俺は一体理解していたというのか。
何を分かっていた。
何も知らなかったんじゃないのか、福富寿一。
何も知らないという可能性を消したくて、絆や信頼という安易な言葉に助けを求めたんだ、そうだろう。

「…荒北」

未だ目覚めない荒北の寝顔に手を添える。
何かから解き放たれたように柔らかなその表情は、今は俺に何を訴えかけようとしているのだろうか。
分かり切った答えを求める俺を笑うように、どこか遠くで寿命の近い油蝉の鳴く声がした。




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