どうしようもない黒荒 3

・新開+黒→←荒

・新開さんと黒田くんの間に愛はない

・黒田チャンが荒北さん好きすぎてヤンデレ風味

・なんだけど荒北さんは後輩に手を出すのはダメだろとか真面目なこと考えて黒田ちゃんに本心は告げてない、つまり黒田チャンの一方通行に見えて実は両思い

・荒北さんにムラムラしっぱなしの黒田ちゃんはプレイボーイ新開さんといかがわしい関係に走る



限界は突然に訪れた。
ずっと心の中に溜めていた、俺の頭の中の荒北さんだけを汚していたどろどろとした黒い物が今、現実の荒北さんを汚している。
部室のベンチの上に俺の手で縫いつけられた荒北さんは何も言わない。
ただ憧れていた黒い瞳が俺の方を見据えている、その事実に全身が震えるほどの歓喜が湧き上がってきた。
荒北さんが俺に押し倒されている。
箱根の狼、飢えた野獣、そう呼ばれ畏怖される箱根学園のエースアシスト、そして俺の最愛の人が、俺を見上げている。

「荒北さん
荒北さん、
あらきたさん」

愛しい。
愛しくて、愛したくて、壊したくて、でも大切にしたくて仕方ない。
甘やかしたい、甘えて欲しい、甘えたい、ごちゃごちゃになってしまった感情をぶつけるように無防備にさらされた荒北さんの白い首筋に噛みつけば、痛みに不快感を覚えたのか呻きが聞こえてくる。

「痛いですか、荒北さん」

「イテェに決まってんだろ、っ」

「そうですか、なら気持ちよくなるように努力しますから」

だから、途中で気絶したりしないでくださいね。
とどめを刺すように耳元に吹き込んで、噛み痕の着いてしまった肌を慰めるように舌を這わす。

「黒田!」

「やめませんよ、俺は。
ずっとあんたをこうやって抱きたかった、俺の頭の中あんたを汚すだけじゃもう我慢できない」

「お前の都合押しつけんじゃねぇヨ!
俺は」

うるさい、と伝えるために無理矢理口を塞ぐ。
俺の唇に当たる荒北さんの体温は思ったより低い。
緊張してるのか、なんて理由で適当に自分を納得させて有無をいわさず開いた口から唾液を流し込む。
飲み込みきれなかったらしいそれが白い頬を伝い落ちるのを横目で眺めながら、潤んだ瞳と視線を絡ませる。
新開さんとしたときよりずっと扇情的な視線は、俺に加虐心を与えるのに十分すぎる要素だった。けれど、問題は解消されない。
重ねていた唇を離した瞬間に、荒北さんの熱に浮かされていた目はすぐにいつもの野獣と呼ばれる視線に戻ってしまっている。

「いい加減にしとけよ黒田ァ、俺はそんな関係に走るつもりは全く無ェからナ」

突き放さないで。
ここにいて。

「あらきたさん
お願いです、お願いですから」

その先の言葉は出せなかった。
俺が後輩だからって垣根を作らないで、目を逸らさずに俺を見て。
そんな女々しい言葉を口に出す勇気すらなく、荒北さんの上に乗ったまま薄い胸板に頭を預ける。
こんなに近くにいるのに、この人は決して俺のものにはなってくれないのだ。

「あらきたさん、あら、きたさん」

呼ぶ。
迷子のように、何度も何度も。
涙混じりの声は自分で思うよりずっとずっと情けなくて弱々しくて、でも俺は自分で自分を止められない。

「どこにもいかないでください」

出口の見えない感情の渦の中、優しく後頭部に触れた右手だけが、優しくて暖かかった。





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