文スト 短編 | ナノ
 敦/まるで新婚生活

ふわりと鼻腔を擽る、仄かな甘さを含んだ香り。それは彼女からしたもので、同じ匂いを纏っている筈なのに彼女から薫る匂いの方が甘い気がした。

同じ匂いを纏う敦たちを先輩たちが温かい目で見てくるのが少々気恥ずかしいが敦は多幸感に包まれていた。
同じ匂いを纏って、手を伸ばせば届く距離に大切な人がいて。まるで、

「……どうしたの?敦くん。顔真っ赤だけど……」
「な、なんでもない!」

顔を赤く染めた敦を彼女は心配そうに、他の社員はにやにやと見つめていた。

──まるで夫婦みたいだ、と思ってしまったのは口が裂けても言えない。

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