文スト 短編 | ナノ
 中也/寂しい、寂しい、愛されたい

寂しいと思うのは、愛されたいと思うのは、そんなにもおかしいことだろうか。



十五の時、一緒に暮らしていた仲間たちと離れ離れになった。羊と呼ばれていた自分たちは、横濱の゛そういう゛大人たちから見ると邪魔者だったのだろう。
気付けば皆バラバラになっていた。

切っ掛けは、そう。
仲間たちを救う為に王様だなんて呼ばれていた奴がポートマフィアの連中と手を組んでから。
自分たちと離れて行動する姿に寂しさを抱いたけれどこれも仲間の為だと我慢していた、のに。仲間の一人が彼奴は邪魔だなんて信じられないことを言い出して彼を切り捨てた。

なんでそんなことするの。今まで私たちのことを守ってくれたのは中也じゃないか。

そう訴えても私の言葉は届かず、とつとう仲間たちは彼に銃口を向けた。
それから仲間の命を救う為にポートマフィアに加入した彼を追いかけて、自分もポートマフィアに入ったのだけれど。

「……あーあ」

仕事の合間、ほんの少しだけ手を止めてボヤく。
視線の先では彼───中也が私の知らない人たちと楽しそうに笑っている姿が。しっかりと実績を積んでいく中也は周りに期待されてて、何の功績を上げられていない私は下っ端の下っ端。
どうしてこうなっちゃったんだろ。私はただ中也の傍にいたいだけなのに。

ずっと中也が好きだった。いつか想いを告げようと思って、でも微温湯のような関係が心地好くて壊したくて告げられずにそのまま。
意気地なしの自分を中也はなんとも思っていないだろう。仲間、友人、その延長線のような場所に立っているだけ。ほんの一歩分だけ、中也に許されてるだけ。

「嫌いになれたらなァ」

夕焼け色の後ろ姿に向かって小さく呟く。嫌いになれたら、だなんて口にしてみたけれどそれが難しいことはよく知っている。
この感情を簡単に捨てられるのなら、こんなところまで追い掛けてなんかいない。
ああ、それにしたって少しくらいこっちを見てくれたっていいのに。突き刺すように見つめているのにどうして気付いてくれないのか。

こんなにも恋しくて、こんなにも寂しがっているのに中也は酷い。ズルい。ばか。……すき。

これ以上見つめていても悲しくなるだけだとそっと目を逸らした。



「……いいんですか?」
「いいンだよ、これで」

中也が朗らかに笑って答えるとリップマンは呆れたように溜息をつくが気にしない。
羊の仲間であった彼女が自分に向ける視線の意味を知ったのはいつだったか。多分、仲間だと思っていた存在に銃口を向けられるよりもずっと前。

あれだけ判りやすく見つめられ、その視線には熱が乗っていることに気付かない訳がない。それでも尚知らないふりをしているのは、全てを彼女の口から聞きたいからである。

寂しい、寂しいと、愛されたいと零してくれたならその体を抱き締めて二度と離してやらないのだ。

「恋は駆け引きだって言うだろ?」

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