文スト 短編 | ナノ
 君愛/牽制

彼女の白い肌に痕を残すのは判りやすい牽制。
目の届かない場所で、彼女が他の男に言い寄られていると思うと気が狂いそうになるので近付けさせないためのものだ。
然しあんまり露骨な位置につけていると怒られてしまうので、彼女には見えない位置につけてみた。

『今日ね、なんか、安室さんに驚かれた』
「おや、何かあったのかい?」
『何も。……ねぇ、何かした?』
「いいや、何も」

電話越しに白を切ると、呆れたように溜息をつかれた。凡て彼女の為だというのに心外である。
──然し、彼女に残した鬱血痕を見つけたということは下心を持って彼女を見たということだ。そういう位置につけたのだから。

早く排除しないとな、なんて思いながら太宰は口角を上げた。

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