▼ 君愛/愛してる、愛してる
「愛しているよ」
──ほんの戯れというか。彼女の照れた顔が見れたらいいな、というちょっとした企みだった。
ソファーに座って読書をしている千尋の隣に座り、その頬に手を添え此方に顔を向けさせて甘く囁く。
本心からの言葉は自分が思っていた以上に甘いものになり、少々気恥ずかしかったがそれを顔に出さなかったのは意地だ。
「…………、」
突然のことに驚き固まっていた千尋だったが、何を云われたのか理解したのだろう。
然しその頬が赤く染まるよりも早く、千尋は太宰の手に頬を摺り寄せた。
「……私も」
「ウ"ッ」
伏せられていた瞳が太宰を見るととろりと蕩ける。
言葉は少なくともその瞳は雄弁に千尋の感情を語っており、太宰は思わず胸を押さえた。
「すき……」
「…わたしも、すき」
「ウ"ッ」
だからその目はやめてほしい。
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