文スト 短編 | ナノ
 君愛/ポッキーの日

学校へ行く途中、偶々寄ったコンビニで見つけたPOPについ手が伸びた。
他意はない。ただ────そう、美味しかったので買っただけだ。誰に言うでもなく心の内で言い訳をしながら、千尋は買ったポッキーをそっと鞄の中へと仕舞った。


昼休み、屋上で昼食を取った後これからどうしようかと考える。どうしたら自然と話を切り出せるだろうか。隣にいる太宰は陽気に当てられたのか欠伸を零しており、このままでは昼寝を始めてしまうかもしれない。それまでにはどうにかしなければ。
よし、と気合いをいれた千尋はいそいそと鞄からそれを取り出して既に寝そうになっている太宰にそっと声を掛けた。
「あ、の、治くん。……ポッキー、食べる?」
「食べる」
若干食い気味に反応した太宰に驚きながらもポッキーの封を開ける。隣から伸びてきた手がポッキーを一本取って、それから千尋の口元へと運ぶ。
「え」
「ほら早く、口開けて」
あーん、と急かされておずおずと口を開くとそこにポッキーを突っ込まれる。これはもしや自分の意図に気付いているのでは。そこまで考えて、妙に恥ずかしくなって目を逸らしていると太宰がポッキーの端を咥えた。
「!?」
そして千尋が心の準備をする間もなく太宰はどんどん食べ進め、あっという間に残り数センチに。ニヤニヤと楽しんでいる様子の太宰にいたたまれなくなくって、折ってやろうとした瞬間────唇に何かが触れた。
「治く、」
「ん?」
薄く開いた唇の隙間から分厚い舌が捻じ込まれ、怯えるように逃げ惑う舌は簡単に捕まってしまう。そこから好き勝手蹂躙され、漸く解放されたのは昼休みが終わる頃だった。
「なに、す……!」
「ポッキーゲーム、したかったんでしょう?」
揶揄うような言葉にカッと頬が赤くなった。つまり千尋の企みは全て気付かれていたということで、どう切り出そうか悩んでいたことも気付かれているのだろう。
湧き上がる羞恥を誤魔化すように顔を逸らすとクスクスと笑い声が隣から聞こえてきた。
「そんなに私とキスしたいのならそう言えばいいのに。幾らでもしてあげるよ」
「……そういう訳じゃないし」
「本当に?」
親指が唇に触れる。先ほどの、甘い味のキスを思い出して期待するかのように胸が高鳴った。
……どうせ全て見抜かれているのなら、素直になってしまった方がいいのかもしれない。
「…………ん」
目を閉じて唇を差し出せば、また笑われたような気がしてちょっとだけ腹が立ったけれど────重なる柔らかに全てを許してしまいそうだった。

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