文スト 短編 | ナノ
 君愛/可愛いあのこの可愛いところ

夕方の喫茶店。
少しばかり混んでいる店内で、友人たちと愉しそうに話している千尋を見て太宰は頬を緩めた。年相応、とでもいうべきだろうか。薄く笑みを浮かべている千尋を眺めていると袖が引っ張られた。

「太宰さんって千尋お姉さんの何処が好きなの?」

コナン、という少年が無邪気な子供の顔を貼り付けて太宰に聞いてきた。ちらりと安室を確認すると、他の客の接客をしながら此方の会話に耳を立てている。
いいだろう、ならば聞かせてやろうと太宰はにっこりと笑みを作った。

「愚問だね、少年。凡てに決まってるじゃないか」
「そうだけど、そうじゃなくて!!」
「勿論君の云いたいことは判っているさ。でもね、私は千尋なら髪一本、遺伝子一つまで愛しているのだよ」

笑顔と共に云い放てば少年の頬が引き攣ったのが判った。然し事実なのだ。
太宰は千尋のものならば、彼女はバラバラに分解されたってその凡てを愛することが出来るし、何なら永遠に眺めていることも出来る。

「けれど、そうだね。君の望む答えを云うのならば、目かな」
「目?」
「そう。何処か冷めた目で世界を見ている瞳が、私を視認した途端とろりと蕩けるのさ。──最高だとは思わないかい?」

千尋の瞳が甘く、優しく蕩けるのは太宰に向けられる時だけ。
たっぷりの自信と自慢を乗せながら、コナンに云うと何処からか食器が割れる音が聞こえてきた。

prev / next


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -