文スト 短編 | ナノ
 君愛/喧嘩するほど仲がいい

「飲みに行くぞ」

不機嫌そうな声に書類整理の手を止める。顔を上げればこの部屋の主である尾崎に書類を持ってきたのか、中也が紙の束を手に部屋に入ってきた。
その言葉を咀嚼して飲み込んで、千尋は口を開く。

「嫌」
「あァ!?」

まさか断られると思っていなかったのだろう、千尋の答えに中也が眉間に皺を寄せる。

「自分の酒癖の悪さ、忘れたの。絶対に嫌」
「手前も似たようなもんだろ!」
「一緒にしないで」

中也の酒癖の悪さを思い出し、千尋は溜息を吐く。
絡み酒というのだろうか。酒を飲んだ中也は少々鬱陶しい。時折そのまま眠りにつくこともあるのでそういう時は楽といえば楽だが、そうなった場合中也を家まで送り届けなければならないのは千尋だ。

お前も酒癖悪い、と中也は云うけれど千尋はそれなりに強い方であるし自分の限界をきちんと理解しているので、潰れる程飲んだりしない。
千尋の言葉を喧嘩を売られたと受け取ったのか、中也が書類の束を机に叩きつけ千尋に向かって怒鳴る。

「その喧嘩買ってやるよ!表出ろ鉄仮面女ァ!!」
「上等。帽子ごと潰してやるよ」
「いい加減にせんか!!」

険悪な雰囲気のまま部屋を出ようとする二人に尾崎の雷が落ちた。

prev / next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -