捕食


とろとろに、ぐちゃぐちゃに溶かされて蕩かされて。骨の髄まで食べられてしまいそうなその瞳にはしたなくも、体が疼いてしまった。









「えぇっと、これは、その…んむぅ!?」

弁解の為に言葉を重ねようとしている千尋の口を己の口で塞ぐ。

千尋が薄手のワンピースを態々選んで今着ている訳ではないことを十分に理解しているが、それでも気に入らない。理解しても納得していない、といったところか。

「ぁ、ぅぅ、治く、」
「私に集中して?」
「ふぁ…」

情事を連想させるような手つきで腰を撫でれば抗議の声が上がるが、それすらも飲み込むように口づければ段々と千尋の顔は蕩けていく。

彼女の咥内を舌で荒らし、逃げるように奥に隠れている舌を絡み取り態とらしく音を立てれば千尋が縋り付くように太宰に抱きついてきた。

最後に舌を軽く噛んで口を離し、崩れ落ちそうになった千尋の体を抱きとめる。

「……ふふっ、そんな物欲しそうな顔しちゃって。──後でたっぷり可愛がってあげよう」
「………うん…」

蕩けた顔をしている千尋の濡れた唇をそっと撫でれば甘い声を出しながら頷く。期待に満ちた目で見つめてくる千尋に太宰は笑みを浮かべる。

目は口程に物を云うと云うが感情が顔に出にくい千尋はそれが特に顕著だ。といってもそれに気付ける人間は片手で数えられる程しかいないが。

「却説、そろそろ覗くのはやめて出てきたらどうだい?」
「おや、気付かれていましたか」

千尋の顔が誰にも見られないようにと胸元へと押し付けながら屋上の入り口の方へと顔を向ければ、会場からずっとついて来ていた三人が立っていた。

沖矢という青年は感心したかのように、安室は嫉妬を込めた目で、江戸川少年は顔を真っ赤にしながら此方を見ている。

三人がついて来ていることには気が付いていたので、千尋が見えないようにと事に及んでいたが声や雰囲気は伝わっていたらしい。見せつけるようにしていたので当たり前だが。

「私たちに何か用かい?」
「えぇっと、その、千尋お姉さん。キッドが何処に行ったか見た?」

あのコソ泥の行方を探しているのだろう。江戸川少年が顔を赤くしつつ千尋に問うてきた。逃亡してからかなりの時間が経っているし諦め半分、といった雰囲気だがキッドキラーとしてコソ泥の行方は気になるらしい。

問われた千尋といえば、太宰の胸元に顔を押し付けたまま口を開いた。

「わかんない…」
「判らない、とは?逃げた方向くらいは見たんでしょう?」

咎めるような沖矢の言葉に千尋がぐすりと鼻を鳴らした。泣いているのだろうか。

文句を云いそうな安室はずっと黙って此方を見ている。どうせ自分と千尋をどうやって引き離すかなどと考えているのだろう、と太宰は予想する。

どうやって引き離そうかと考えても無駄だ。何をしても意味などないのだから。勝ち誇ったような笑みを安室に向けていると千尋が顔を上げた。

顔を上げた千尋は予想通り泣いていたようで、濡れた目で太宰をキッと睨んだ。

「治くんの所為、でしょ…!」
「うん?…ああ、気持ちよくて忘れちゃった?」
「ッ馬鹿…」

色を乗せた笑みを千尋に向ければ千尋は判りやすく頬を赤らめた。
滅茶苦茶に溶かして、蕩かして、骨の髄まで喰らい尽くしてしまいたい。

未だに何かを云いたそうにしている三人を無視して、太宰は再度千尋の唇に口づけた。このまま食べてしまってもいいだろうか。
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