首輪


之は首輪です。貴方のものだと声高々に云うもの。
之は鎖です。貴方のもとへ還るもの。





胸元で揺れるネックレスには太宰のループタイと同色の石が埋め込まれている。

千尋は其れを見て頬を緩ませた。
自分は太宰治のものであるという証拠。其れが嬉しくて嬉しくて、頬がだらしなく緩んでいく。

「あ、」

ふと思った。
太宰に自分と同じ気持ちを抱いてほしいと。自分も同じように見せつけたいなと。
誕生日や記念日には勿論贈呈品を渡しているが、このネックレスのように自分のものだと主張する何かを贈った覚えはない。

少し思案した後に千尋は携帯を取り出して、最近出来たばかりの友人に電話をかけた。

「あの、園子ちゃん。少しお願いがあって」




週末。普段なら既に横浜に帰っている昼頃。千尋は園子と蘭、それと毛利家に居候しているというコナンと共に東都デパートに来ていた。

世良も誘ったのだが残念なことに外せない用事があるという。また今度一緒に遊びに行こうと約束したので次の機会が楽しみだ。

「ごめんね、急に」
「気にしないで!私たちも千尋ちゃんとこうして買い物に来れて嬉しいから」
「いつでも誘ってね!部活で断ることもあるかもしれないけど…」
「ううん、大丈夫。有り難う」

笑う二人につられて千尋も頬を緩めた。急に誘ったので迷惑だったのでは、と心配していたが余計な心配だったらしい。
よかったと安堵していると、蘭の隣に立っているコナンが興味津々といった様子で口を開いた。

「ねぇ千尋お姉さん。誰にプレゼントするの?」
「えっと…」

恋人にだ。素直にそう云えばいいのだが少しばかり気恥ずかしいところがある。言葉を濁す千尋に園子が目を輝かせながら詰め寄る。

「それって前言ってた人!?」
「う、うん」

何故こんなにも興奮しているのか。疑問に思いながらも頷けば勢いよく肩を掴まれた。
突然の接触につい体を揺らしてしまったが頬を赤く染め恋する乙女状態になっている園子が其れに気づいた様子はない。

「──任せて。最高のお店を紹介するわ」
「あ、ありがとう…?」
「そうと決まったら早速行きましょう!」

園子に引き摺られる形で足を進める。

デパート内を暫く歩いて辿り着いたのはカジュアルな雑貨店だった。見渡す限り値段も高校生でも手が出しやすそうではある。
あまり高価なものを贈っても受け取ってもらえない可能性があるので、此れくらいの値段なら安心だろう。

商品も落ち着いた雰囲気のものが多く、太宰に似合う品も見つかりそうだ。園子と蘭と別れ店内を見て回る。

どんなものがいいだろうか。どんなものなら喜んでくれるだろうか。
太宰の笑顔を思い出しつつ商品を選んでいく。

『有り難う、千尋。嬉しいよ』。
いつものように蕩けるような笑顔を向けてくる太宰を想像しつい頬を赤らめてしまう。

コップは揃いのデザインのものがある。本の栞も贈った。ハンカチもついこの間贈ったばかりだ。ああ、何が良いだろうか。
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