関係性編集中

「黒子君、ココアおかわりいる?」

「あ、すみません」

「黒子、バニラアイス食うか?」

「ありがとうございます」

「俺がついでに取ってくるよタイガ」

「タツヤこそ待ってろよ、俺の家なんだし、俺がやるって」

立ち上がった二人の脚が目の横に映る。本当に仲のいい兄弟だなと、黒子は一人頷いた。







































火神家のソファーはわりと大きいほうだと思うが、三人並ぶと密着せざるを得ない。しかも黒子を挟んだ二人は長い脚をもて余していた。高身長め。

「終わっちゃいましたね…」

「残念そうだね」

「やっぱり本場はすごいです」

「もうちょい古いのあるぞ」

ぱっと色素の薄い瞳が輝く。だめだ可愛い、と二人は一斉に顔を背けた。いつもはあれほど不動だというのに、バスケのDVD一つできらきらしている。それはそれでもの悲しいが、こんなに可愛らしい姿が見られるのならば何も惜しくはない。

氷室は火神の淹れたコーヒーを一口傾けて、黒子に向かいにこりと微笑んだ。その際さりげなく肩に手を回すのも忘れない。

「俺の家にもいろいろ置いてるよ。よければ今度見に来るかい?」

「ほんとですか」

「それならここに持ってきたらどうだ? また三人で見ればいいだろ」

黒子の背後へ伸ばした火神の手が氷室の腕を払った。そしてそのまま黒子の頭を撫でようとした火神の手を氷室が弾く。

「名案だね。“三人”で」

「だろ? 二人でもいいんだけどな」

はははと頭上を滑っていく笑い声を聞き流し、黒子はココアのカップを両手で包み込んだ。こうしていると和む。余裕が出来ると、何かをしたくなる。その何かは大抵本人の好きなものだ。直前に映像などによって刷り込まれていれば尚更。

「バスケしたくなります、ああいうの見てたら」

互いの腕をぎしぎし交差させていた二人は、すぐさま腕を引いて黒子のほうへ身を乗り出した。そのタイミングが変わらなかったものだから、息ぴったりですね黒子は勝手に感心する。

「ならまた行くか! 一緒に」

「ストバスかあ……何だか懐かしいね。黒子君と初めて会ったところだ」

二人とも本当にバスケが好きなのだろう。何というか気迫がある。この二人にパスを出すのはさぞ楽しいに違いない。

「はい。皆で行きたいですね」

両隣が固まった。

何かおかしなことでも言っただろうか。

「………俺らだけでやってみねえ? お前となら2on5でもいけるし」

「それなら火神君一人でもいけるんじゃないですか?」

「じゃあタイガが1on5してる間に俺と黒子君で組まない?」

「おいタツヤ!」

「黒子君の言う通りタイガなら一人でもやれるだろ?」

「黒子のパス受けて決めんのがいいんだよ」

「俺ならパスだけ活かしたりしないよ」

流れるように自然な仕種で氷室の手が黒子の手を捉える。ゆるく上げられると、あと少しで黒子の細い指先に形のよい唇が触れる距離だ。

「俺はタイガやキセキの世代ではないから、君のことをより理解出来ると思うのだけれど。どう?」

氷室が話す度吐息が爪を掠めた。ゆらりと底のない漆黒に見つめられて、瞬きを忘れてしまう。

が、いきなり働いた引力が黒子を氷室とは真逆の方向へ引き付ける。肩が火神の胸板にぶつかった。

あれ、自分はいつの間に火神に抱き締められているのだろう。

黒子の腕を掴む指の一本一本に力が籠っている。

「こいつは俺の相棒だ!」

強い声に氷室は沈黙を落とす。黒子は状況を理解しようと頭をフルに回していた。二人の様子は眼中にない。

「…相棒」

「そうだよ」

「じゃあ」

氷室が、女ならば誰もが見とれる甘やかな微笑を浮かべた。

「相棒の座はあげるから、黒子君自身は俺がもらうよ」

そうして白い手を掬い上げ、その爪先にキスをする。

「てっ…め!」

牙を向く弟分に余裕の態度で黒子の手に指を絡ませていた。強かさが軽く引くレベル。

「二人ともいい加減にしてください」

突如、火神と氷室の視線が下がった。それを若干苦く思いながら、べりっと密着し過ぎている二人を剥がす。

先程まで状況把握を頑張っていた黒子だが、いつまでたっても訳がわからなかったためもはや思考を放棄していた。ただ自分の分かる範囲で言葉を発する。

黒子は諭すように口を開いた。



「兄弟喧嘩に僕は関係ないでしょう」



再び固まる、“兄弟”。

「く、黒子」

「黒子君…」

喧嘩の原因貴方なんですが。

「喧嘩するほど仲がいいといいますし、周りまで巻き込まないでください」

そこで立ち上がり、ココアを持って移動。呆気に取られている二人は当然放置された。

「では続きをどうぞ。二人が仲良しなのはよくわかってますから、遠慮しなくていいですよ」

きりっと首肯を見せて、フローリングを歩く後ろ姿。何故だろう、格好よく見える。

「……タイガ」

「………おう」

「俺たち二人が揉めるのは、わりと筋違いだったらしいね」

「……………おう」

愛しいひとを見つめる二人は、よく似ていた。




















(はじめに、気づいてもらうところから)



















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>>ぽすお様

初めまして、ぽすお様

企画ご参加ありがとうございました!

アメリカンサンドなんて素敵なリクをいただけて嬉しかったです^^Ξ^^

火黒氷は私もずっと書きたかったものでして

二人には結構攻めまくってもらったつもりでしたが、黒子の鈍感は炸裂しているでしょうか(笑)


それではありがとうございました、これからも黒子受けを頑張ります!


2013/01/26






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