ギャンブルはお好き?

聞いてくれますか、火神君。というか聞いてください。

先日、講義の前に黄瀬君と会ったんです。え? ああ、確かに講義ほとんど被ってないのによく会うんですよ。何でですかね。

……何ですかその目は。……あ、そうです、それでどうしたかっていうと、次の土曜日空いてるかって聞かれたんです。でも僕その日氷室さんと本屋巡りする約束があったので、……ちょっと、大丈夫ですか火神君。

何でいきなりむせたんですか。水いります? ……いえ、どういたしまして。やっぱり食堂じゃなくてマジバにすればよかったですね。人の目が痛いです。まあ僕は見られてませんけど。

はい? 氷室さんですか? いえ別にメールが来たので……メアドですか? もう何年も前に交換してましたよ……いや訊かれたので。火神君の知り合いですしいいかなと。

……変な顔してますよ。ええと、続けますね。

それで、氷室さんと約束してるって話したら、黄瀬君が急に真顔になって。なんだかおかしなことばかり言うんです。たぶらかされただの縁切るべきだの死ぬだの俺の黒子っちだの……あ、最後のは否定しておきました。

で、その時図ったようなタイミングで氷室さんが通りかかって。そしたら黄瀬君が僕を氷室さんから隠そうとするんです。氷室さんと何か話してましたが、あまり空気がよくなかった気がします。

それでお茶を濁そうと黄瀬君の前に出たら、何故か氷室さんに抱き締められ……火神君大丈夫ですか。やけにむせますね。

で、そうしたら黄瀬君に腕を引っ張られて、あれは痛かったです。でも二人とも放してくれないんですよ。黄瀬君が氷室さんに僕のこと放せと言って……まあ君も放せと思いましたが。氷室さんも氷室さんで、笑いながらぼそっと何か言ったんです。多分英語でした。なんて言ったんでしょうね。

それから、二人ともなかなか放してくれないので大変でした。結局ミスディレクションで抜け出しましたけど。講義遅れますし。

それで、今度は講義中に……勿論まだまだ話ありますよ。食べながらでいいので聞いてください。

講義中にですね、僕の右隣に紫原君が座ってたんですが、どうしてか左には今吉さんが座ってたんです。次の講義まで暇だからとかなんとか言って。

で、講義始まったんですが、紫原君がずっと隣でバリバリサクサクお菓子食べてるし、今吉さんは何も言わずに僕の方じっと見てくるしでとても集中出来ないんですよ。

ミスディレクションで席変えようかなあと思ったんですが両脇固められると難しいじゃないですか。しかも今吉さんですし。

更にはそのうち飽きたとか言って紫原君が頭僕の肩に乗せてくるし。そしたら今吉さんがすごい腕力で僕の腰を引き寄せてきてですね。紫原君の頭が空振りする訳です。それで彼すっかり不機嫌になって、今吉さんと口論始める訳です。その間も引き寄せられたり体重かけられたり、死ぬかと思いました。

実際背が縮んだ気がします………いや縮みましたよもっと大きかったです何言ってるんですかイグナイトしますよ。

それから、その陰湿な死闘を脱出した僕はそれから青峰君に捕まってしまいまして。なんかどっか暗がりに連れ込まれ……いえ大丈夫でしたよ? ちゃんと続き聞いてください、連れ込まれかけたところを笠松さんが助けてくださったんです。まじ神でした。

笠松さんが青峰君に説教してくれたんですが、青峰君ですからね、聞く訳ありません。

僕もう面倒だったので笠松さんの手を引いてその場を立ち去ろうとしたんです。はい? 手ですか? そういえば握りましたね、あの時。

………火神君、割り箸折れてます。すごい握力ですね、はい、新しいの使った方がいいですよ。

それでですね、笠松さんと逃げようとしたら、いきなり背後から押し倒され……火神君何処行くんです? 話まだ終わってないです。何ですか、顔怖いですよ。

言わずもがな押し倒してきたのは青峰君でして、笠松さんに助けを求めようとしたら、笠松さんどうしてか顔真っ赤で、僕のヘルプに気づいてくれなくて。仕方ないのでイグナイトかまして逃げました。

それで次の講義があるホールに向かったら、今度は緑間君が……そうですよ、今度は緑間君です。まだあります、聞いてください。

僕早く席つきたかったのでホールに入りたかったんですが、扉の前から緑間君が退いてくれなくて、目を逸らしながらなんか言ってるんですよ。でも僕聞き取れなくて面倒だから押し退けようとして、そうしたら手を掴まれまして。なんか切羽詰まった様子だったので、こちらも真剣になるでしょう? で、緑間君の目をじっと見つめ返したところで、緑間君が消えました。

あ、はい、消えたんです。僕の視界から。桜井君が突き飛ばしたらしいです、平謝りでしたから。彼もホール入れなくて困ってたんでしょうね、選択同じですし。

僕も扉前で邪魔になってましたから、謝ろうとしたらいかなり謝りながら抱きつかれまして。

謝りながら僕の手を強く握って……あ、そういえば確かに緑間君に掴まれていた方の手でした。それがどうかしました? 何でもないって、煮えきりませんね。

桜井君に抱きつかれてたら、復活した緑間君にまた手を掴まれて。桜井君ずっと謝ってるんですが緑間君に何か言われても僕の手は離してくれないんですよ。

桜井君は謝って、緑間君は謝ってばかりではなんとかかんとかなのだよとか何か言って、まあ要は言い争っている訳です。すごいですよね、謝りながらって。

……それで二人が扉前でずっと喧嘩しているので、僕も他の学生も揃って講義に遅れました。教授に怒られました。何で僕まで。

それで反省文という名のレポートを言い付けられました。ここでまた事件が起こります。

何処行こうとしてるんです、最後まで責任取って僕の愚痴を聞いてください。いっぱいいっぱいなのは僕の方です。

レポートに使う本探しに図書館に言ったら、後ろから抱きつかれました。はい、また抱きつかれました。目隠しもされました。だーれだとか聞かれたんですがまあそんなことするの高尾君だけですよ。黄瀬君ですか? 彼はすぐ僕の名前を叫ぶので察知も簡単なんです。

で、高尾君に抱き締められましたが慣れてるので……慣れてますよ、はい。それでほっといたら……ほっときましたよだから。話の腰をいちいち折らないでくださいよ、黙って聞いてください。

ほっといたんですがずっと名前囁いてくるし頬擦りしてくるしでいい加減うざくなってきて、肘打ち繰り出そうとしたんですが、避けられて正面から抱き締められました。――そんな時です。

何耳塞いでるんです。聞いてください。聞きたくない? 聞かなきゃダメです。

そんな時です……彼が現れました。ええ、彼です。

鋏は持っていませんでしたよ、さすがにもう大学生ですからね。

一体何が起こったのか、いつの間にか赤司君に抱き締められてました。マジックですね。異様に腰やら髪やら撫でられて驚く暇なかったですけど。

しかし高尾君が僕を抱き寄せて赤司君と距離を取ってくれまして。すごいですよね、勇者に見えました。感謝も尊敬もありませんでしたが。

それからはまあ僕をボールみたいに奪い奪われの繰り返しで、僕酔って気分悪くなりました。二重の意味で。

顔色悪い僕に気づいてくれた高尾君が僕を医務室に連れて行こうとして、赤司君が僕が診るから問題ないとか言い出したのでまた奪い合い再開してしまって。

取り敢えずそのまま気絶しました。

……はい、しました。さっき医務室のベッドで目が覚めました。………………服は乱れてませんでしたし、大丈夫です、多分、きっと。

……とまあ、取り敢えずここで落ち着きます。我ながら濃い時間を過ごしましたね、午前中だけで。

あ、でも食堂来る途中で、キセキの皆さんや他に絡んできたひとたちがポーカー? ですかね、してるの見ました。

今吉さんと赤司君はいい勝負でしょうね、ほんと。



……そういえば僕、レポートしなきゃいけないんでした。

話聞いてくださってありがとうございます火神君。また明日も、一緒にお昼食べてください。



では、また。



















はお
(君を賭けていざ勝負)



















黒子は知らないらしい。

火神は皿を空にしながら、そっと息をつく。

あの癖のあり過ぎる奴らが、何故同じ大学に集まっているのか。

3年以上付き合ってきた相棒を思って、火神は先ほど差し出された水を飲み干した。



















 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>猫サイダー様


大変お待たせ致しました!!

企画ご参加ありがとうございます

私自身があまり詳しくないこともあり、大学設定を生かしきれず申し訳ありません…

赤司君側から相棒を出していいか迷ったもので、今吉さんと桜井君に出てもらいました

ご期待にそえていなければすみません…!

1万から時間が過ぎましたが、これからも当サイトは頑張っていきます

ありがとうございました!


2013/04/28






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