彼とあの子の統治論
はい、どもどもコンニチワ。なんでも見えちゃう『鷹の目』高尾和成でーす。いえー。
実はここ最近すごく気になってることがあります。
なんでもね。
「おい、ぼさっとすんな。走らすぞ」
「はいはいー」
あの、結構顔はいいけど常に言ってることがヤクザちっくな先輩に、恋人がいたらしいのですよ。
しかもそれが、俺と俺の相棒の知り合いらしいのですよ。
……これがやさぐれずにいられるかよ。
いつからだよ。いつからそんな関係だったんですか全然まるで気付かなかったんですけどこの俺が。
宮地……あ、ヤクザな先輩ね。あのひとには俺らのがあいつより近いし、あいつには俺らのが近い。だから俺らを介してそういう関係になったんならわかる。だがしかし引き合わせたどころか紹介すらしたことねーよ。何でだよ。
わからないことがあったら調べる。そうして人類は発展してきた訳です。好奇心は若者に欠かせない成長の種な訳です。
というわけで。
「……失礼しまーす…」
そろっと先輩の鞄からスマホを抜き取る。別に、プライバシーを侵そうってんじゃない。ただちょっと、確認したいことがあるだけで。
宮地先輩たらロックも掛けてない。こんなんじゃ狡猾な後輩に出し抜かれても知りませんよ。
電話帳から一つ選んで、掛ける。
3コール目がぎりぎり終わる前に、通話中に切り替わった。
『……もしもし、宮地さん?』
…………。鈍器で殴られた気分。こんな優しげな声は知らない。
「……えーと…ごめんね、宮地さんじゃなくて高尾です」
『…………』
なんか凍った気がする。
『……どうして高尾君が、宮地さんのスマホから掛けてるんですか』
何この差。絶対零度なんだけど。
「……いや、俺が普通に訊いたんじゃ、答えてくんないだろーと思ってさ。ごめんな、卑怯な手使って」
『許可を得た訳じゃないですよね? プライバシーという言葉を知っていますか?』
「はい存じておりますごめんなさい」
鉄壁じゃん。
「……その、時間ないから単刀直入に訊くけどさあ…。何で、宮地先輩?」
『は?』
「別に、俺が口出し出来ることじゃないのはわかってるんだけどさ。ただ、知りたくてさ」
あ、ちょっとずるい言い方しちゃったかも。
黒子は俺が、後輩として宮地先輩を心配してるから、こんなこと訊くんだって思っちゃったろうな。
でも俺たちは。知りたいってずっと思ってたよ。
『…………君が訊くほどの理由なんてないですよ』
黒子は思ったより落ち着いていた。俺よりは確実に。
『好きだから以外に、何があるっていうんですか』
「……………、それはずるいよ」
そんなこと知ってるのに。
お前の口から聞いたら、納得するしかないじゃんか。
「……、ほんともう、何で――」
「何が何でなんだ、なあ」
「…………………」
「ひとのもん無断で使うっつーことは、それなりの覚悟があるってことだよなあ、高尾クン?」
..........Oh.....
「えーっとぉ、宮地さん、あの」
「言い訳は後で聞いてやるよ。取り敢えず」
長い指が、俺の手からスマホを奪い去った。
「ひとの恋人に手出してんじゃねーよ。校庭に埋めんぞ」
……あーあ、もう。
通話中なの知ってて言っちゃうあたり、たち悪いぜ先輩。
ひとまず現実逃避に、ちゃんと引き留めてくれなかった緑間をどう詰るか考えよう。
彼とあの子の統治論 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
>>鴉様
鴉様、企画ご参加ありがとうございました!
前回から引き続いてお付き合いくださっていると知り本当に嬉しかったです
『俺とお前の革命論』は友人の為に書いたもので、他にも楽しんでくださっいる方がいるとわかりほっとしました
日常の一コマを切り取ったお話だったので続きをどうするか迷ったのですが、高尾君に出しゃばってもらいました…出しゃばり過ぎました、すみません
二人は特に劇的なことがあった恋人どうしではないですが、“平凡”にずっと仲良しだと思います
リクエストありがとうございました、これからも当サイトをよろしくお願いいたします!
2013/12/24