巻→坂(pdl) 2015/04/01
小野田坂道は不思議だ。
変わり者、という認識はどこかにあって、そういうところがもどかしかったりむず痒かったりしたものだが、それを差し引いてもどこか、別だった。
その理由を知りたいと思わなくもない。けれど知ってしまったとき、自分は彼の頼れる先輩でいられるだろうか。
「巻島さん!」
跳ねる音階の一つ一つ、特別になる。
今手を伸ばせば、わかると思った。
「――何ショ」
けれど結局それはどうしようもない痛手になるかもしれないとも思ったから、指先はこめかみを掠めるだけで終わった。
まだ、もう少し。
今気づいたらきっと重傷になるから、もう少しだけ。
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