雪→燐(aoex)
2014/10/14





「雪男、」



青い瞳が揺れて、兄はちょっと困ったように笑った。薄い唇からのぞく犬歯を、憎く思った。

「幸せになるんだぞ」

尖った耳を削ったら、尾を断ったら、牙をへし折ったら、何か変わっただろうか。

あるいは、その血をすべて入れ換えることが出来たなら。

けれどそうしたら僕らは互いに特別でも何でもないその他大勢になって、結局望む言葉は告げられなかった。

兄さん、僕は。

僕は幸せになろうと言ってほしかったんだ。

でもその言葉を言えだなんて言わないから。

だから僕がそう言えないことも、どうか許してほしいんだ。













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臆病は、罪だね。


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