memo


▽僕は他人のモノ

毎度お得意の後味あまりよくないAKです。続きに格納。



アークエンジェルのブリッジでキスしながらキラには他に恋人がいる20歳 アスキラです。 設定で、書いたアスキラです。







「キラ……今日、いつものところで」

アスランにそう告げられた日は、仕事を終えてから寝るまでの時間に、アークエンジェルのブリッジの片隅で落ち合う。
詳細な時間は決めていない。
だからアスランの方が早いこともあれば、僕の方が早いということもあり、同時ということもあった。僕らはそれだけの数の逢瀬を重ねてきた。

静まり返った艦内。
セキュリティは予め切ってある。計器の類いの電源はスイッチが切られて久しかった。それはすなわち、最後の戦いから2年経った今も、アークエンジェルが必要とされる事態が起きていないということだ。いいことだと思う。

非常電源だけが灯る室内は、以前オーブ本島全域で流行したホラー映画に出てくる病院のような雰囲気を醸し出していた。
うっかり思い出してしまった僕は、背を震わせた後、ブリッジへの道を急ぐ。
かつて何度も行き来した道を、今度は足音をなるべく立てないようにして走った。
ブリッジへ繋がる扉の鍵を解除すると、そこにはすでに幼馴染みの姿。

「アスラン」

お待たせという言葉は、彼に抱き締められて音にならなかった。ちょっとだけ驚いてしばらく逡巡し、僕はそろそろと彼の背に手を回す。
それからアスランの無防備な肩口に額を押しつけて、すぅと息を吸いこんだ。彼の匂いが強くなる。心が充足感でいっぱいになった。
けど。
同時に胸の片隅がしくしくと痛んだ。

顔をあげてアスランと視線を交わらせる。僕は瞼の裏に浅ましさを隠して、少しだけ背伸びした。アスランの手が僕の頬にかかり、顔に影ができる。吐息が唇にかかるのを意識するよりも先に、互いに唇を寄せた。何度も角度を変えて、舌先を絡め口づけを深くしていく。
吐いた息さえも奪われるほどのキスに僕は溺れ、落ちていった。


――そこにあるのは、現実。

僕はきみを裏切っている。
だって僕のこの手は、もうとっくに別の人を選んでいるのだ。

でも。
それでも。

僕は手放したくない。
否、放せないのだ。どれだけの罪悪感に苛まれようとも、決して。

だから今日も僕はきみにキスをして、それを受け入れる。




離されない、限りは……。



2014年5月9日 1時|


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