爪先→崇拝
※ヤス→グリ※



 

 恭しく、わざとらしく、大げさに、足裏に両手を添えたヤスタカは、それはもう極上の幸せと言わんばかりの笑顔で、グリーンを見上げていた。

「畏れ多いです、リーダー」
「んだよ。お前がやりたいっつったんだろ」

 面倒臭そうに、事務室の椅子に座っているグリーンは、頬杖を付いてヤスタカを見下ろしていた。いや、見下していた。まるで汚らわしいモノでも見る目だ。それに喜びを感じているヤスタカは大概の変態で救いようがない。
 膝を組んだ状態で、ヤスタカがグリーンの右足を持っている。微かにその掌が震えているのが分かった。わざわざヤスタカの為に素足になってやったというのに、と内心愚痴塗れのグリーンだが、これを許可した彼自身も大概のバカだ。

 じっ、とグリーンの爪先を見つめたまま、固まっているヤスタカに、グリーンは痺れを切らす。早く、するならとっととしてしまえ。

「いやー。でもこの時間に浸れるのが凄く、俺にとっては貴重なもんで」
「俺も忙しいんだ」
「分かってるんですが」

 少しずつ、足に近付いていくヤスタカの唇に、グリーンは顔を背けた。見ていて気持ち良いモノではない。むしろ気持ち悪い。こんな風に育てたつもりは無かった、と思うことこそ誤りであるとグリーンは気付いた。

 触れられた部分から体温を奪われていく。
 満足気に笑うヤスタカに、グリーンは何も言えない。
 ただ一つの悪寒だけが、背中の筋を駆け抜けた。

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あとがき
狂信的なヤスタカ。

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