ホテルネタ ※セフレ関係の原作沿いレグリ。救われない。※ 「ヴっ、ぇ、げぇ」 下から掻き出すだけでは足りないから、俺はいつも上からも掻き出そうとする。無理やり喉の奥へ指を突っ込んでいると顎の関節が外れそうだ。毎回のことだ。さらにその結果、随分と歯がボロボロになってきている。毎度の胃酸が影響を及ぼしていることは明らかだ。このままではきっと俺は全ての歯失ってしまうかもしれない。それでも、どうしても止めることが出来なかった。止めてしまえば、俺のこの胸糞悪い気持ちが一切流れ出なくなってしまって、俺自身が死んでしまうのは間違いなかったから。 ぜぇぜぇと。今日も洗浄したばかりの裸体のままトイレの便器に縋り付いた。お湯を浴びてもこんなことをしていたらすぐに身体は冷えてしまう。それでも、しなければならない。 風呂とトイレが一体型のホテルをあえて選ぶのはこの為だ。あいつはきっと、何一つとして知らなければ興味も無いだろう。俺がこんな状態になっていることも知らない。何度も何度も繰り返してきた状況だ。もう慣れが生じ始めている。 ならばどうしてこのループから抜けられないのかって。 そうだな、そもそもきっかけは何だったのか。確か、旅を始めてしばらく経って、タマムシシティであいつと再会したあたりから、何かがおかしくなっていった。 「ねぇグリーン。今日は一緒に泊まろうよ」 少し歯切れの悪さもありながら、そう言ってきたのが幼馴染であった。もしかすると旅立って時間が経つから寂しいんじゃないか、だなんてことを思ったから。俺はしょうがないな、と一緒のホテルに泊まることにした。その時点で相手の緊張に気付くべきであったのに。俺は特に何も疑わなかった。 ホテルに到着すると、なぜか同じ部屋にまでされてしまって。どんだけホームシックを患わせてるのか、と飽きれた俺は、つまりはその時点で間違っていた。 どこからそんな知識を仕入れて来たのか知らないが。 俺は人生で初めて、幼馴染といわゆる、カラダの関係って奴を持ってしまった。しかも俺の了承が一歳得られないまま。なんてこった。 本当は、ドブにでも捨ててしまいたい関係性。なのに、どうして今でもこうやってズルズルと引きずっているのだろう。しかも俺の身体と精神は随分と疲弊し、限界を迎えかけていた。 それでも。俺はげぇげぇと吐いては、また突っ込まれることを繰り返す。誘われては嫌悪を示すのに、流されてしまっている。おそらく、あいつをもしも拒絶してしまったらどうなるか分からないからだろう。 俺は途方に暮れるあいつの姿しか、想像が出来ない。俺は、それをしたくなかった。まるっで母親のようだな、と思う。だからあいつは、きっと俺に甘えている。俺は、決してあいつの親ではないのに。 すっぱい味が舌を覆って、臭いも鼻をつく。それに気持ち悪くなってまた吐いた。あーぁ。いつまでこんなことし続ければいいのか。もう終わりなんて見えない。ただ広がるのは嫌悪と少しの不安。 まるで泥沼の中を這いずり回っているような感覚がいつまでも抜けないまま。俺は明日も旅を続ける。そうしてあいつからの要望があれば、きっとこれから先も応え続けてしまうのだろう。 便器から吐瀉物が流れ出ていく様が、うらやましい。 俺はいつまでも、この汚物塗れの世界から抜け出せないのだから。 だなんて、クッダラナイことを思って。 俺は力無く嗤った。 - - - - - - - - - - あとがき 可哀想な人たちばかり。 |