粉飾ネタ ※女装するグリーンに辟易して苛立つレッド。 幼馴染みが特殊な嗜好で俺を非常に困らせてくるんですが、どうしたら良いですか。 などという質問をネットの掲示板に書き込みたくなる程、俺は頭を抱えて悩んでいた。現実に周りにいる人へは到底、相談が出来る内容じゃない。 そんな幼馴染みは、今日も今日とて俺に見せつけてくる。男には本来、有り得ない格好を。 「なぁーレッド、どう思う? これ可愛いよな」 なぜか俺の部屋で姿見を見ながら、ひらりとセーラー服のスカートをなびかせる彼に、俺はどう反応を返したら良いか分からない。えらい短さだ。危なくないのか。そして少し胸元が見えるスカーフの配置や、いわゆる腹チラだなんてものが出来そうな上の丈の短さ。本来であれば女の子が着ることでその効果を最大限発揮するであろう要素。 それを男が着た所で、一体何の意味がある。気味が悪い。いっそのこと本心をぶちまけてやりたいとは思うが、そうすればきっと彼との関係が崩壊することにも繋がるから、出来ないでいた。結局、俺は怖がりなのだ。 それでも、気持ち悪いのも確かで。何が楽しくてこんなことをするのか理解が出来ない。したいとも思わない。 「おいレッド、何か言えよ。お前、そんなんだから女の子にモテねーんだぞ」 別にこっちとしては女の子にモテたいなどと思ったことは一度もない! むしろお前の質問に応える時点で男として終わってしまう! と、声を大にして言いたい。恨みがましい目で見ると、彼は笑った。俺は遊ばれている。とことん。心底、腹の立つことだ。 俺が困る様を、こいつは楽しんでいる。分かっている。俺はきっとこいつにとってはただの暇つぶしの玩具でしかない。こんな罰ゲームみたいな扱いをされている時点で。 「黒のハイソックス、もう古いか。あ、エクステ忘れてる」 ドタバタと本当に、目の前で「女の子」になっていく幼馴染みを、眉をひそめて眺める。この時代、いくらでも道具や技があるのか知らないが、みるみる内に男の要素がかき消されて行く。といっても、元々体格がそれほどしっかりした方ではないから、余計に違和感が無い。それでも俺にとっては幼馴染みだ。昔から仲良くしてきた、一緒に遊んで来た、幼馴染み。どうしてこんな嗜好が発達してしまったんだろう。 情けなかった。それは、俺に対してか彼に対してかの、どちらだったのだろう。 「ま、いっかこれで。我ながら上出来だな。じゃぁレッド、行ってくっから」 ローファーを手にして部屋を出て行く幼馴染みを止めることも出来ない。どうやらそのまま町に繰り出して、若干危なっかしいことをしているらしいのだけれど。はっきり言って自己責任だ。何かあったとしても。俺はもう、ほぼ諦めていた。彼を止めることも出来ない。止めようとした所で止まらないだろう。いっそのこと一度、酷い目にでも遭えばきっと彼の気持ちも変わるかもしれない。それこそ誰かに「襲われ」でもすれば良いのではないか。その状況までも想像しかけて、……止めた。 そうやって、他力本願で、俺はこの状況を放置していた。自分から改善しようとはしない。 (……) 俺以外、誰もいなくなった部屋で。ベッドに仰向けになった。 どうして俺がこんな幼馴染みについて悩まなくてはならない。全て放棄して関係も切ってしまえばいいだろう、と。言われるかもしれないが。それだけはどうしても出来なかった。出来ない事情も―――――ある。 それを考える度に。俺の心臓に何度も針が突き刺さるような痛みが走る。いつまでもじゅくじゅくと傷んで仕方ない。おそらく、いつか腐りきってしまうだろう。 こんなにも俺は悩んでいるのに。幼馴染みは勝手気ままなものだ。こちらの気も知らないで。 俺はずっと、これからも彼の嗜好に付き合い続ける。関係を先に進めるつもりなどない。それで、良いと思う。 むしろ、俺の本当の気持ちなど、彼には分からないままで、いさせてやる。 - - - - - - - - - - あとがき こちらの気も知らないで! |