腹→回帰
※ピロートークレグリ※





「グリーンのお腹って温かいねー」

 ぐりぐりと。その顔を直接腹に捻じ込むように動かす幼馴染の髪の毛に、掌を埋めた。

「その代わり俺は寒いけどな」
「えー。さっきで充分温まらなかった?」
「それとこれとは別だ。おい、こしょばい」
「んーなんだろうね。お腹って心臓と一緒に動くから凄い心地良い」
「意味分かんねぇよ」
「赤ちゃんって凄い所にいるんだなーって思わない?」
「そりゃお母さんのお腹の中なんて二度と入れない所にいるからな?」
「そうじゃないよ。お母さんと一緒に呼吸してお母さんと血を共有するなんてさ、とんでもないよね。僕らはもう出てきちゃって何も覚えてないけど」
「なに。お前、お母さんのお腹に帰りたいの? 回帰本能?」
「違うよ。僕、グリーンのお腹に帰りたいなーって思って」

 とんでもない発言だ。
 そもそも。お前は俺の腹から出て来たわけでもないから帰りたいという動詞を使うことも間違っている。と、言いたかったがその前に。さっきまで俺の中を散々掻き回して欲を吐き出して、俺自身も吐き出したその直後に行われる会話という面において、背筋に寒気が走った。

「グリーンの中って温かいんだろうなー」

 そう言いながら腹筋に唇を寄せてくるコイツを見下ろしながら。
 俺の中で大量に死んでいった数多の命と、俺の腹の上で死んでいった数多の命。決して母親の胎内で芽吹くことの無かった命。男の、しかも排泄器官で死んでいった命。そんなこと決して、コイツは考えていないのだろうけれど。

 俺の中へ吐き出し続けるコイツがまるで、そうすることで俺の有り得ない胎内にでも入って行けると思っているかのようで。

「……そんなこと、ねぇよ」

 心に走った拒絶をどうにか喉で食い止めて、言えば。

「そういうと、思ったよ」

 フっと顔面に迫った顔を、避けることは出来なかった。





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危うい関係

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