ランプの魔人と旅人








「で、願い事はなんだ」
「え」
「俺はランプの魔人。このランプにキスをした人間の願い事を三つだけ叶えることが使命だ。だからとっとと願い事を言え」
「え、いや、ちょっと、そんないきなり言われても」
「なんだお前、俺のことを知らないでこのランプを手に取ったのか」
「偶然骨董品店で売ってたランプにどうしてこんなの紛れてんだよー!」
「こんなの、とは随分な言い方だな」
「俺、ただの旅人なんだけど」
「それでも人間だろ。何か三つくらい叶えたい望みはあるはずだ」
「俺は自分の願いは自分で叶えるタイプなんだ! 誰かに頼ることだってしない」
「おい、それじゃぁ俺をどうして呼んだ」
「知るかってんだ、勝手に出てきたのはそっちだろ」
「お前、ランプにキスしたんだろ」
「わざとじゃない! ただ石に躓いてこけた拍子にランプがカバンから出てそこに俺の口が当たっただけだ」
「……」
「……」
「それじゃぁ俺はどうすればいいんだ」
「知るわけないだろー」
「俺は人間の願いを叶えることしか役割がない」
「それはまた大層だな」
「俺がこのランプから自由になるには、後五十個の人間の願いを叶えないとならない」
「へぇ、もうすぐじゃないの」
「俺が今ここに出てきたのは、およそ百年ぶりだ」
「うげ」
「まぁ、元々死なない存在だから、いくら年月が過ぎようと人間の感覚的には一日が経ったくらいだろうが」
「どうしてランプになんて閉じ込められたんだ」
「大昔に俺が調子乗ったら神様に怒られて呪いを掛けられた」
「自業自得じゃん」
「うるさい」
「じゃぁさ、もし俺がお前を自由にしろ!ってお願いすれば叶えられるわけ」
「そんな上手いシステムじゃないから無理だな。五十個叶えないと俺は自由になれない」
「なんだよそれ、全然万能じゃないじゃん」
「お前な、何でも俺が願いを叶えてやるって言ってるのにどうしてそんな不機嫌なんだ」
「だって、そんな何も苦労せずに叶えたって、虚しいだけじゃん」
「―――お前の願いってのはなんだ」
「幼馴染を探してる。ずっと、もう五年くらい前から。俺と同じ町に住んでたんだけど、あいつの両親が商人だったから町を出て行っちゃって。多分この国のどこかでまだ商売を続けてる」
「へぇ」
「俺はあいつに会うまで旅を止めないって誓ったんだ。絶対に見つけてやる」
「そんなにまで拘るのは理由があるのか」
「約束したんだ」
「何を」
「一回もあいつにゲームで勝てなかったから、また会った時にもう一回ゲームしようって」
「そりゃまた随分と単純だな」
「俺にとっちゃ大切なんだ、口出してくるな」
「分かった分かった。だが、お前がこのランプにキスした以上は俺の主人はお前なんだ。このランプを捨てようとしたって、ずっとこのランプはお前に着いて行く。そういう魔法が掛かってる」
「めんどくせー」
「だから俺はお前に着いて行く。そして旅の途中で他にお願いが出来れば、俺に頼め。それを三回繰り返せばお前は俺から解放される。どうだ?」
「……」
「そう不貞腐れるなよ。チャンスだと思え。これからどんな危険な目に遭うか分からないだろ。その時に俺に頼ってくれれば何でも解決してやれる」
「……分かった、だけど俺が本当に三つ願い事言うかは分かんねぇぞー」
「へいへい」

 そうして旅を再開した旅人の傍に魔人が一匹。




(あとがき)
 魔人なデンジと旅人のジュンですだからわかり(ry






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