悪魔祓いと夢魔









「ねぇ、しようよ」
「ダメだ」
「ちょっといい加減に僕が限界なんだけど」
「お前、熱があるだろ。そんな状態で出来るか」
「大丈夫だって。ヤッた方が元気出るから」
「そんなわけないだろ。体力的に負荷がかかるだけだ」
「インキュバスは人間と構造が違うんだよ、精気が糧なんだからセックスした方が栄養補給になる」
「俺に熱が移るだろうが、何より」
「やっぱり君はそっちなんだね! 僕のことなんて一つも考えてないだろ!」
「バカか。俺はエクソシストだ。どうして悪魔のことなんざ考えないとならないんだ」
「日頃から誰が性欲処理を手伝ってあげてると思ってるわけ」
「別に頼んでない」
「言ったね! 本当に君って最低最悪のエクソシストだね人間としても屑なんだから救いようが無い!」
「喚くな熱が悪化するだろ。大人しく寝ておけ」
「ねぇ、ちょっとで良いからさ、本当に。精気頂戴」
「ダメだ」
「僕を餓死させる気? この程度の熱なんてへっちゃらなんだよ! それよりも空腹に殺される!」
「黙れ、うるさい」
「なんで僕もこんな奴と契約しちゃったんだ本当に人生の汚点だね!」
「お前がそもそも俺に言い寄って来たんだろ。美味しそうだとかなんとか言って」
「だって実際美味しいし」
「なら文句言うな。その時点でお前じゃなくて俺に主導権があるんだよ、この関係は」
「だからってお前の言うこと素直に聞いてたら僕の身が持たないから主張はさせてもらうよ」
「面倒くさいな」
「君に言われたくないね」
「減らず口を叩くな。寝ろ」
「お腹と背中がくっつきそう」
「黙れ」
「ほら聞こえないの、ぐるぐるお腹鳴ってるでしょ」
「これでも食っとけ」
「イモリの黒焼きなんて何の腹の足しにもならないよ!」
「……あのな、エクソシスト協会から通達があって、明日に大々的な悪魔祓い合戦が繰り広げられる日程になってるんだ。だから強い悪魔だとすぐに見つかって地獄送りだ。お前はちょうど弱ってるからおそらく、魔力的にも気づかれない。俺の結界も張ってあるから尚更バレる心配はない。ここでお前が元気になられちゃ困るんだ」
「―――」
「だから、とりあえず明日が終わるまで大人しくここで寝ていてくれ」
「じゃぁさ、手握っててよ」
「……」
「僕が寝るまでだよ? 分かってる? 皮膚から取れる精気ってそんなに無いけど、多分腹の足しにはギリギリなるからさ」
「分かった」
「絶対僕が寝るまで離れちゃダメだよ」
「しつこいな。分かったと言ってるだろ」
「後さ」
「何だ、まだあるのか」
「明後日はちゃんと、僕に触って」
「……分かってる」
「うん」


 そして夢魔の額にキスを一つ落とした悪魔祓い。







(あとがき)
 シゲルとシンジです。分かりにくかったかなww






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