思索の海で心中
(蒼子さんとのタイトル交換:ファイリ)
俺はリーフが好きなんだよ。痛みに顔を歪ませたり、羞恥に顔を赤くしたり、絶望に打ちひしがれるリーフが好きなんだよ。そしてリーフ、君も俺が好きなんだろう? 分かってたさ、そんなの。昔からの君の態度で。だから君は俺の言うことには基本的には逆らわなかったね。純粋な君は、俺の言うことに逆らえば嫌われるとでも思っていたんだろうけど、決してそんなことは無かったのにね。俺に抵抗する君だってきっと可愛かったと思うんだ。従順な君も勿論可愛いけれど。もう少し俺に反発してくれたって良かった。いじめ甲斐があるからさ。
泣き顔の君が一番好きだなぁ。特に俺に泣かされた君の顔を見る度に快感があった。高揚感があった。支配欲が湧いた。もっと見たいと思った。だから俺は君には容赦なく酷いことをした。君を傷つけることに疑問はなかった。俺はただ、その顔をするリーフを見たかったから。その目的を達成するために彼をいじめる必要があるならば、どうでも良いと思った。それでリーフが傷つけば傷つく程、俺は充足感を得る。見事な循環だ。そこにリーフの意思など考慮されていない。なぜなら、彼は俺のことが好きだったし、目立って抵抗も否定も拒絶もされなかったから。
もしそうしていた理由が俺との関係を壊さない為だとすると、随分とリーフはバカだと思う。それで俺が喜ぶことでリーフも喜んでいるというのなら、ぶっ飛んだ精神だ。嫌なことは嫌だと言えばいい。止めて欲しいなら止めてと言えば良いのに。自らの人格をそこまで貶めてまで俺を好きでいることは、彼にとって何の利益をもたらすのだろう。
「あ゛ッ、ふぁぃ、あ゛」
ググッと両腕に力を込める。ベッドの上で仰向けになっているリーフの首へ、俺の両手が伸びていた。親指で喉仏を潰すように押さえこめば、彼の首に力が入るのが分かる。気道が塞がれて苦しんでいるのも分かる。口の端からだらしなくヨダレを流して、目が見開かれて俺のことを見つめてくる。
「が、ぁ、い゛ぁ」
「何言ってるか分かんない」
笑顔で宣告する。さぁ、君が呼吸が出来なくなって酸欠になって死んでしまうまでこうしているつもりだろうか。滑稽滑稽。しかしさすがに命の危険が迫ることには逆らえなかったのだろう。俺の両手首を掴んでこの行為を止めさせようとしてきた。だが明らかに不利だ。こうやってリーフをベッドに押し倒し、俺が馬乗りになっている限り力の掛けやすさが違う。そうやって俺の両手首を握ろうとしたところで然したる効果はなかった。俺は何も痛くない。苦しくも無い。だが首を絞められるリーフにはただの苦痛しかない。不当な配分だった。けれど、それが俺とリーフの関係では等価になる。ただの見方の違いだ。
「ほぅら、やっと離してあげるからね。リーフ」
「!?、っ、ひゅ、が、は! げほっ、あ゛ぐ、は、はッぁ」
いきなり圧迫が無くなった喉に盛大に噎せ返ったリーフが俺から顔を背けた。涎も鼻水も涙も垂れ流されて、全てシーツに吸い込まれて行く。そうして顔を横向けたまましばらくしていると視線を俺に向けてきた彼に、ゾクッとした。あぁ、こいつはそれでも俺の下にいる。逃げようとはしない。怯えていて、それでもなお俺に縋る目だ。犬の目だ。捨てないでくれと叫ぶ、犬の目。この状況を変えようともしない。そもそも他の状況など知らないのだから。
だからこそ、リーフは俺のモノだ。
「愛してるよ」
甘美に、緩やかに、リーフの脳内を犯していく。優しく、彼に見えない首輪を巻きつけて。涙の流れた頬を舐め上げるとビクッと体を震わせた。まだどうやら視界が覚束ないのか焦点が定まっていない瞳。しかし俺のことを見ているのは確かで。
彼の見る風景に俺がどのように映っているのであれ、構わない。だってもう俺の見ている風景にだって、彼はまともに映っちゃいないのだから。
水中で目を開けるような感覚に、ずっと俺たちは溺れ、続けるのだろう。
思索の海で心中
(それが二人にとってなくてはならないシアワセ)
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あとがき&御礼
というわけで、初めて「Miza」の蒼子さんとタイトル交換させていただきました!
ついったのノリでまさか実現するとは夢にも思わず、本当にありがとうございました。
そして与えていただきましたファイリについてですが、まぁ相変わらずのファイアとリーフでございましたですはいww
いや、もしかすれば今まで一番ファイアがヤンデレになっているかもしれないです。
素敵なタイトルを本当にありがとうございました、蒼子さんに最大の感謝を!