僕は愛するのが下手糞なんです ※グリーンが父親でその子供がレッド(大学生)という近親相姦です。※ 久しぶりに大学を通う都合でアパートで一人暮らしをしている息子が帰ってきた。ほんの少し前までは大学合格のお祝いをして見送ったその背中がまだまだ小さかったのに、今となってはもう立派に社会人に向けて広く大きくなっていた。その姿を見る度に親としては胸が熱くなるものがある。と同時に心に走る寂寥感。もうすぐ本当の意味で自立していくであろう息子は、もう俺の力を借りずとも立っていける。いつまでも子離れ出来ない親のままではいけないな、と思いながらも少し難しい。 俺にとっての妻、息子からした母親は、彼が中学生の頃に離婚をした。原因は彼女の浮気で、もはや俺と息子への愛情が無くなってしまっていた。しかしそれ以前から関係は冷え切っていたし当然と言えば当然だ。それでもやはりショックなものはショックで、妻と別れた後はしばらく塞ぎ込んでいた。息子だって辛かったから本当は俺がそこに気を利かせなければならなかったはずが、最終的に慰められていたのは俺の方だった。 「大丈夫だよ」 夜遅くに仕事から帰ってきてソファで項垂れるように座っていた俺に、ずっと起きてくれていた息子はそう声を掛けて来た。全くその気配に気づいていなかった俺はあまりの不意打ちに情けなくも泣いてしまった。引き攣るように声を漏らしてカッターシャツに染み込む涙が冷たかった。息子の掌は温かかった。まるで赤ん坊をあやすように彼はずっと俺の頭を撫で続けた。仕事の疲労と精神的な疲労で困憊していた俺はそのまま寝てしまって。でも生成された体内時計は非常に正確で朝になれば通勤に間に合うように起きていた。そうして用意されていた朝ごはんにまた泣いたのだ。息子が愛しかった。 そんな息子が受験する大学として選んだのが、どう足掻いても自宅から通いで行ける距離にある大学ではなく、それでも彼が選んだ大学であるならば何も文句が言えなかった。そもそも自宅から行ける場所にある大学と言えば私立大ばかりで、息子のことだから家の負担にならないように国公立を受験するつもりでいるらしい。さらに寮を申請するつもりらしく、家賃も安く済ませられる、ときっと考えている。 別に自宅から通える場所で、などと制限するつもりもなかったから、そのまま彼の思うようにさせてやった。そうして無事に合格して家から出ることになった息子に、嬉しいだけの気持ちではなく、明らかな寂しさが心を埋めるのが分かった。 行ってくる、と。たまには帰って来いよ、と。 見送って、一人だけの家に戻って。 かつて結婚する前までは一人の家にいるのが当たり前だったのに、家族と暮らすことを覚えてしまった体には一人で家にいることが痛い。心が痛い。それでも慣れなければならなかった。 連休などの休みには帰ってくると言っていたが、大学生になれば友人も増えるし旅行だなんてことも頻繁に起こるだろう。だから無理はするな、と言っておいた。俺のことなんて気にしなくて良いと。そうでなければいつまで経っても子離れ出来ない気がしたから。本当に。それでも寂しいけれど。無理矢理見ないようにしなければならなかった。そこは、俺が強くならないと。 だからお盆や正月にゆっくり息子と過ごせる時間は本当にありがたくて。未成年でもなくなった今ではお酒だって飲み交わせる。嬉しかった。俺は一番日本酒が好きで、息子もまた日本酒が好きだと言ってくれた。熱燗が好きだなんて、そんな所まで似なくても良かったのに。しかし、おちょこを持って互いに酒を注ぎ合える関係となれたのは、父親として顔がにやけたって仕方ない。幸せだった。本当に、俺の息子が、息子であって良かったと。思えた。 そして、事は起こった。 息子が三年生の時。秋の三連休。学園祭だなんて行事が大学で繰り広げられる頃、息子は帰ってきた。友達と一年に一回の祭りを楽しめば良いのに。と携帯での通話越しに言えば、馬鹿騒ぎしているだけの大学生を見ていても飽きる。まるでそんな冷めた社会人のような発言をして、彼は帰ってきた。内心、学園祭よりも実家を優先してくれた事実に浮き足立つ心が分かる。本当に親バカだなぁ、だなんて。にやける顔を止められないまま彼を迎え入れた。 「おかえり」 「ただいま」 その一言が温かい。 ほわほわする気持ちを抑えられないまま、もう俺よりも身長の高くなった息子を見る。高いと言っても小指の長さ分くらいだけれど。他愛ない話をして一緒に晩御飯のおかずをスーパーへ買いに行き、一緒に台所に立つ。一人暮らしを始めて自炊の腕も高めたらしい息子と作れば、あっという間にそこそこのおかずが完成する。そして、日本酒も忘れない。 晩酌を交わし、ほぼ見ていないバラエティ番組をBGMにして、互いの生活について語り合う。時には哲学的な話にもなった。そういった内容も話せる息子とは相性が合う。己の思考回路を晒すことを厭わない。 ふと、沈黙が訪れた。俺もだいぶアルコールが頭に回って、もはやただ無意識に言葉を垂れ流すだけになっていた時だったから、本来ならその静寂は心地よいはずだった。もう睡眠へと体が向かい始める頃合いだ。 「父さん」 ウトウトしかけている俺の耳に、そんな静けさを切り裂いて息子の声が入ってきた。そう、切り裂いてきたのだ。その声色にどこか違和感を覚えて、俺は息子の方を見やれば、不意に右手首を捕まれる。そのまま、左肩を押されてごろんっ、と床に仰向けに寝転がるハメになる。そこまで状況判断が出来たのに、体に全く力が入らなかった。これは、だいぶ酒が回っている。 「あのさ」 息子の声だけが、ずっと空間に響いていた。テレビの音なんて、とっくに聞こえない。この世界にいるのは今、俺と息子だけだ。俺の体に覆いかぶさってくる、息子。何ら事態を把握していない俺。しようともしない、俺。 「キス、していいかな」 発言の意味なんて、尚更、分かる訳がなかった。 やっと現実に返ってきた時には遅い。息子の両手が俺の頬を包んで、優しく唇を舐められた。そのまま、息子がキスをしてきて、ガッと意識が解放される。拘束されていない左手を駆使して、どうにか体を引き離そうと暴れたが、ここまでマウントポジションを取られてしまっては俺が不利すぎた。その間にも侵攻は続く。ぬるっと入り込んできた舌にゾッとした。日本酒独特のアルコール臭がたまらなく鼻につく。妻と別れて数年、キスなんていつ以来だろう。ぞわっ、と嫌な何かが全身を駆け抜ける。抵抗しても息子は行為を止めない。左手で彼の髪の毛を掴んで顔だけでも引き離そうとしても無理だった。頑なに動かない。 「ん、ぅ!」 じんわり視界が濡れてきた。いつの間にか俺は泣いている。なぜだろうか。それでも息子は構わないのだろう、行為を続ける。やっと解放された頃には完全に息が上がっているし、唇も濡れていた。急いで袖で擦れば、息子は上から呆然と眺めている。非難の一つでもくれてやれば良かったのに、俺は随分と混乱してしまっていたらしい。 濡れた目元に赤くなった頬、息が上がって上下する胸。それら全てが息子にとって目に毒だったようで。だがそんなこと、俺から分かるわけがない。 「―――――あぁ、もう」 大きくため息をついて、息子は俺の体を持ち上げた。あっさりと、こんな大の大人一人を横抱きに出来るなんて信じられない。いきなりの浮上に慌てた俺なんて無視で、息子はそのまま運べば近くに合ったソファに俺の体を沈めた。 「ごめん、父さん」 どうして彼がそこで謝ったのかなんて、尋ねたくもない。 その日、俺は息子に犯された。覚えているのは全身を駆けた激痛と、俺の悲鳴と、ただ寂しそうな息子の顔だけ。 - - - - - - - - - - お題はこちらより→postman様 あとがき いさやさんのご想像とはおそらく、だいぶ掛け離れたぐらい優しいお話になっちゃいましたすみません、いさやさんの他のリクエストでどうにか暴力チックな感じは再現したいですはい・・・orz この度はリクエストありがとうございましたー! |