color WARing -24-


 ガタガタッと不規則に揺れる飛行機の中、雲海が広がる窓の外を眺めていた。

 イッシュ地方からカントー地方へ、14時間の長旅の最中のこと。といっても、もう終盤に差し掛かっている。
 搭乗メンバーには違和感しかない。かつて敵対していた者同士が、なぜか同じ空間に存在している。プラズマ団として活動していた僕を含め、幹部の人間達。そしてアララギ博士率いるポケモントレーナー達だ。トウヤとトウコもいる。久しぶりに見る顔に、複雑な顔をするしかない。ピリピリッとした肌を突き刺すような緊張で埋め尽くされた空間。

 どうしてそもそも、僕達がこうやって同じ空間で対面しているかと言えば、この世界を襲っている脅威がそもそもの原因。多くの人間、トモダチを何の躊躇いもなく殺害する集団が出現したことによる、被害。最初はイッシュ地方だけの問題かと思われたのだが、外国の地方でも起こっているらしく、政府の指示によりその地方と連携を取ることにしたのだ。そうして召集されたのが僕達。実力のあるトレーナーを「カントー地方」と呼ばれる場所へ送りこむ為、用意されたのがこの飛行機。

 どうやらあちらの地方ではつい最近「中枢の敵」と現実で相対したという。その事実に驚いた。もしかすると向こう側の地方にいる方が、この世界で一体何が起こっているのか分かるのかもしれない、と直感的に思う。それはこの場にいる全員が、だ。
 しかし思想的に相容れないメンバーである以上、互いに警戒は怠らないようで。それも致し方ないと思う。けれど、今、神経を使うべきはそこではないだろう。ふと、僕よりも前に座っているトウヤとトウコに視線が向いた。彼らがこちらを見ていたからだ。しかしすぐに互いに顔をそむけ合った。

「間もなく、カントー地方です」

 アナウンスで告げられて、機体が着陸へ向かうように傾き始めたことを感じる。厚い雲を通って、広がった視界の下には、見たことのない土地が広がっている。当然のことだが。
 カントー地方とはどんな場所なんだろう、だなんて、本来なら初めての土地に対する期待が膨らむものなのだろうけれど。こんな状況であるはずもない。密かに腰のボールホルダーに指が伸びた。果たして、これから先どうなってしまうのだろうか。何も予想がつかない。

 ふと瞼を閉じれば、頭に響いてくるトモダチの声。これがこの地方の叫びだ。ギュッと服の袖を握りしめて、ただ地へと向かう機体の流れに身を委ねるしかない。これから先、どれほどの声が消えて行ってしまうのか。そんなこと、想像しようとするだけで無駄であることは分かっている。

main


×