#04 Written invitation



どっちも子供だ、いや、精神年齢変わらない髭が駄目なのか・・・

それを見て同じように溜息をつかんとばかりしているバージルとまた目が合う


「ネロ・・・と言ったか」

「お、おう」

「そんなとこに立ってないで、座ったらどうだ」


さっきの様子から見て出ることはないと思っていた気遣いの言葉に少々驚きつつ

「Thanks...」 と礼を述べおっさんとはテーブルを挟んで反対側の椅子に座らせてもらった。

テーブルの前に広がるのはやはり苺を主体としたケーキやクッキー、ピザにストサンそして紅茶。

何故かこの空間に似合わない日本の和菓子や煎餅、日本茶まで在る。

好きに飲み食いしろと言うように目の前に出でいる。

嗚呼、見てるだけで胃もたれがしてきた。


「あの髭面に何か言われたか」

「何か?ってなに?」

「いや、何も言われてないならいいんだ」

「・・・?」


内容が気になったがジっとこっちを射ぬかれてネロは身動きを取れなかった

どこか落ち着くようで、そう、いつか昔合ったことのあるような懐かしさを覚えた。

そこでネロはふと右腕の違和感に気づいた。

包帯をしていて今まで気づかなかったが、何か違う。

まさか・・・と思い包帯を引き千切らんばかりに少し乱暴に取るとそこには、・・・何もなかった・・・


「なッ・・・!」


いや、何もなかったという表現はおかしい、在るにはある。

いつしか亡くした人間としての腕がそこには存在し、あの悪魔の腕が無いのだ。


「な、んで・・・」

「?どうかしたか、ネロ」

「人間の手・・・なんで。悪魔の手がない」


驚きすぎて逆に思考が回らない。嬉しいのか、悲しいのかさえもわからない。

俺は今誰に見られようと”人間”なのだ。

それは俺が今まで人間でありたいと願ったことが叶ったわけで

でも、それは逆に”守る力”を失ったということを提示していた。


「ネロ」


真正面から声が聞こえた、おっさんだ。


「夢、だろ?お前はそう思っていたんじゃないのか?」


夢。


なんでそれを知ってるとか、気になるが、事態がそれどころではない。

でも、それが夢であるならば・・・全てネロの空想に過ぎないのならば
辻褄があう。


「夢・・・か」


その納得の答えにおっさんの横の若いダンテがすかさず入ってくる


「そうそう!気にすんな、楽しもうぜ!」

「時にネロ」

「なんだ?」

「これからどうするんだ?」


これからどうするんだ、そう言われ特に行く場も決めてないこの髭兎についてきたばっかりにやはり見た目の安心感というか

長年の勘がダンテだと勘違いして全てを頼っていたことに気づいた。


「そのことなら心配ないぜ」

「んお、ネロのふへばいしょわかるんか!」

「だから飲み込んで喋れと言っているだろこの愚弟が」


ごくん


「ネロの行く場所しってるのか!」

「いや、知らない」


少しでも期待した俺が馬鹿だったよ。


「はぁ、仕方ない」


そう言ったバージルは帽子に刺さっていた飾りであろうトランプを一枚引きぬいた。

そのままサラサラと羽ペンを取り出し何かを描いていく。


「ハートの城への招待状だ。これを使って城に入れ」

「え、それって偽造ひ・・・「ダンテダーイ」・・・しゅん」

「でもバージル、城に言ってどうするんだ?あそこはクレイジーな女王が住んでるって噂らしいぜけど」


ジトジトした目線で髭が言う。


「その貴様の言うクレイジーな女王に少し面識がある。きっとお前の力になるはずだ」


その目線に動じずにバージルは俺を見据えて言った。


「わかった」


トランプが渡され、描いてあったのはハートのジャックにバージルのサイン。

はたしてこれが招待状として成り得るのかどうかは、もうおとぎ話の世界なのでツッコまないことにした。


「さて、んじゃ、目的もできたし行くか、ネロ」

「ああ」


最後のストサンを平らげた髭はガタッと席をたってこっちに来た。

髭と一緒に城の見える方角へと歩みだし、一つお礼を言ってなかったことに気づく。





「バージル、ありがとう」


「フン、息子のためだからな」


「・・・え?」




その言葉に瞬きをすると、もうそこはおかしなお茶会も、イカレ帽子屋も三月兎も、

何もなかった。







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