笑う事こそ人生の男と笑う事も忘れた男 その3




「いい加減にしろよバージル!!もっとフツーの起こし方ってモンがあるだろ!?」


頭をさすりながらのそのそと事務所の階段を下りてきた一番最年少のダンテ、若は自らの後ろに続く兄を恨めしそうに見て口を尖らせた。


「うるさい愚弟が!!貴様が早寝早起きを心がけないからこうなるんだ。悔しければ自を恨むんだな。」


やはり予想通りというか、若は幻影剣で幾度も刺されたのかズボンが若干血で汚れている。ソレ洗うの誰だと思ってんだ、まったく。


「こんのっ、Come on brother!!!」

「Die!!!」


今にも喧嘩を始めそうな双子を尻目に初代は切り出す。


「それで、結局二代目は別世界の俺達ってことなんだよな。前例があるし、世界で一本しかないはずのその剣が今ココに複数あるってのだけで、一応納得はしてる。」

「双子銃もあるぞ。」


ずいっと初代に近づいた二代目は初代に見えるように世界に二つで一つしかない愛用の双子銃を手にとって見せる。


「わかった、わかったって!あーもう、疑って悪かったよ!」


ずいずいと近づく二代目を押しのけて、初代はいよいよ双子の激化してきた喧嘩をとめるべく席を立った。


「そういえば、アンタここに来た原因が分かっているっていってたよな……」

「あぁ」

「その原因って……」


ゴクリと喉がなる。やはり、これが一番重要なことなのだ。


「実は、未来のお前に放り込まれたんだよ。」

「……はあ!!???」


ちょっとまて。


「たまたま少し冷やかしたら「いい加減にしろおっさん」って言ってキレられてな……最近は落ち着いてきたかと思ったらそうでもなかったらしい。」


まさか、俺が……。
いや、まず未来でも俺はダンテと一緒にいるのか……ってか今おれは坊やだと馬鹿にされたのか?まてまて、冷やかすってなんだ。どこから突っ込めばいいんだ。

とにかく、こいつがどの時代でもやはり”ダンテ”だってことは十分にわかった。


「詳しく」


ただ、今の俺はそういうのが精一杯だったのは言うまでもない。


「閻魔刀が人と魔を分かつ剣だってのはわかっているだろう?次元斬り等の時間系の技や術さえ使える上に……
あー、ある近しい人がダークスレイヤーって空間のスタイルさえ使えるんだ。そこを利用されてな……。」


いまだ喧嘩に夢中な双子とそれを静止するために奮闘する初代をチラリと見て2様は続けた。


「はあ……。」

「まあつまりは、閻魔刀で作った次元技の切れ目にネロの手でつかまれて放り込まれたんだ。」


流石に、頭を抱えたくなった。
このダンテがここに来た理由が俺だという。
俺自身がやった覚えが無くても罪悪感がないわけではない。


「その、恨んでないのか?」

「坊やは恨んで欲しいのか?」


原因が原因なので大きく首を横に振ることもできずうつむく。
するとポンと頭の上に手がのった。


「パラレルワールドの経験はあるから、まあ……お前たちがいるし、そうだな、そこまで心配事はないな。」


むしろこれからが楽しそうだ。と呟いた二代目は鋭くも優しい瞳でこちらを見ていた。
あぁ、一般的家族愛とはこんな感じなんだろうか。


「ここは賑やかだな」


ギャイギャイと騒ぐ若いのをまるで父親のように見守る。
俺にとって父親が誰かも、どんな感じで子と接するものなのかも正直わからないが・・・。
ただふと、いまは亡き義兄の顔や義理兄姉の両親、そしてバージルが頭を過ぎったのは確かだった。


「ま、賑やかってか、煩さ過ぎて大変だけどな。」

「今が楽しいか、ネロ?」


突拍子も無い質問にネロの口角が上る。
別に、同じダンテでもこの人になら言ってやってもいいかなと思った。


「あぁ。楽しいよ。」


きっと俺も、この人も、笑顔はめったに見られるもんじゃない。

さあ、あのオッサンが帰ってくるまで何を話そうか。




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