二人だけのメリークリスマス




「メリークリスマス!」

「・・・die」

とある街、Devil May Cryのネオンが別のネオンに霞む。
普段殺風景かつゴミだらけなこの事務所もなんやかんやで、今日はクリスマス気分である。

事務所内にはネロと若あたりがやったであろう飾りつけがちらほらと見え、壁に刺さった悪魔にはサンタとトナカイのコスプレをさせていたりと、楽しむ気まんまんに見える。

長テーブルにはいつもより少し豪華な食事が置いてあり、さらに外には雪が積って絶賛恋人たちのホワイトクリスマスである。



だが、問題がある。
この事務所、現在2人なう。

「ちぇっ つれねーな!」

「黙れ愚弟が」

「頭硬てぇからクリスマスに女もみつけられないんだよ」

「ほう、頭の悪いお前にその言葉そっくり返してやろう」

バチバチと弾ける怒りを止める人間がいないものの、流石にここで暴れるのはまずい。
実は以前、半壊させたこの事務所の修理費を、双子で全額負担させられたことがあるのだ。
今度やったら慰謝料含め倍を払わせると、2様とネロにキツく言われている。


「うぁあああ!!もう!なんでクリスマスに兄貴と2人なんだよ!」

「それは俺の台詞だ!お前どこかに出かけたらどうだ」

「外雪降ってんだぜ?雪!寒い以上に移動が面倒」

「くっ・・・他のやつらときたら、ここまで祝う準備なんぞしておいて出かけるなどと・・・」


ちなみに、ネロはキリエの誘いからクリスマスにフォルトゥナへ行くことを一週間前に電話がきて予定を入れたから分かる。

しかし2様と初代は行きつけのバーの店長にもらったチケットで『クリスマス限定!巨大ストロベリーサンデー試食会』というものに一緒に行っているのだ。
2人はそれを断るはずも無く、前日までストサン大好きな俺らに秘密にしてまで出かけていった。

髭にいたっては確実に今日逃げた。
節分の恐怖が染み付いているらしく、双子と一緒というのが身の危険を感じたのか、相棒とレディで一緒に買い物だと。

いや、一緒に行ってもカモにされるのが目に見えてるだろうから、一人でバーにでもいるか女をひっかけているのだろう。


「・・・そういえば、去年も2人じゃなかったか?」

「・・・・・・」

「そうだよな、確かアップルパイの・・・」

「言うな・・・汚点だ」

「でもこの料理って作ったのアンタだろ?」


そういってダンテは手元にあったチキンをほお張る。
完璧主義なだけあって、うまい。


「ほとんどネロが下準備していった。俺はあったものを完成させただけだ」

「アイツ用意周到だな」

「全くだ」


しんばらくの沈黙が降りる。
ただ今夜10時。
もうすぐ初代と2様が帰ってくるだろうか?
もしかすると、髭と一緒に飲み明かしてくるかもしれない。

しかし、まだ当分このバージルと2人っきりの時間は続くようだ。


「まぁ、あれだ。メリークリスマス兄貴」

「・・・はぁ」


機嫌悪そうにそっぽを向いた兄の口元が、音も無く「メリークリスマス」と紡ぐのを見逃さず、ダンテはただそっと笑った。






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