悪魔への牧歌詩 その3
「見たとおり、此処はどういうわけか、若い俺とバージルがいる。
後もう一人居候予定の奴がいるが、今更増えるのなんて気にならないしな」
そう言うと訝しげな顔をした目の前のビショビショだった俺は一度だけ礼を言った。
「それで、お前はどうやって此処に来たんだ?」
一度双子のほうを一瞥して髭のほうへ向きなおる。
「レディが」
レディという言葉に俺だけが「あぁ」と苦笑する。
またあいつか。
レディといえば、ウチに悪魔絡みのものならなんでももってくる。
もちろん依頼の紹介と、借金の請求もあるが。というか後者がほとんどだが。
未だに若だけがクエスチョンマークを飛ばしているをする。
「お嬢さん<レディ>って、まさか」
「そのまさかだな」
「お前が数日前に命名したお嬢さん<レディ>のことだよ」
「!」
バージルが眉間に皺寄よせるのと対に、若は「Oh!」と感嘆をあげる。
「じゃあもう、こっちじゃお嬢さん<レディ>って年じゃねえな」
ニタニタと笑いをうかべる若。
そして髭もそれにのっかる
「そうだが、絶対に本人には言うなよ?女の3大Fワードだ」
「あぁ、・・・確かに3大Fワードにひっかかるな」
話がそれたのにイラついたのか
「話を進めろ」
そうバージルが地を這うような声で口を開いた。
「あ、あぁ」
たじろぐビショビショの俺
この頃の俺ってビビリ・・・いや、言ってて悲しくなった。
「そのレディが、あぁ・・・えっと、マレット島で俺が殺した・・・アイツの手がかりを見つけたって情報を聞いたんだ」
「マレット島?」
「?」
聞き返す若と首をかしげるバージルに目を向けずに
苦虫を踏みつぶしたような顔をしたビショビショの俺。
「…!」
「今更合わせる顔もねぇのに、それ聞いてレディから情報聴きだして探しに行った」
下に向けていた目線を髭に合わせた。
「付いた先は、とある港町で強く親父を信仰してる街だったんだが」
「っ・・・!」
目を微かに見開いた、まさか。
「ガセだったみたいでな
仕方なくアイツの手がかりゼロのまま帰ろうとしたら、
ありえねー強い魔力に惹かれてそのまま海面に熱烈キスだ」
恥ずかしのか目線を右上に向ける
「それで気づいたら落ちたのがあそこだったと」
「そうなるな」
「はいはいおっさん!」
その場の雰囲気に耐えられなくなったのか元気よく挙手した若が続けた
「マレット塔のアイツって?」
「そうだな、双子にはまだ先の話だ」
一瞬息を呑んだ初代を見て俺は言葉を濁した。
こいつらにはまだ知るには重すぎて、残酷すぎる話。
「ちぇー」
「それにしても、全く共通点がなさすぎる」
そうでもない、と言いかけて口を閉じる
「…確かにな」
「ま、また保留だろ、ネロが返ってくるまで保留」
「貴様考えるのが面倒くさくなったんじゃないだろうな」
今にも切りかかってきそうなバージルをあしらって、俺は苦笑した。
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