悪魔への牧歌詩 その2



家の裏にあるシャワールーム。

服を脱いでお湯を浴びようとひねった瞬間、大きな魔力を感じた。


ザバァアアアア


「っ!」


普段はしないが、久々にバスタブに三分の二はった湯に何かが堕ちた。上からだ。


バタバタバタ バンッ


大きな足音がしてバスのドアとカーテンが開かれる。
たぶん魔力に反応して坊主が走ってきたんだろう、後ろにバージルもいる。
水浸しのバスタブには赤い塊、シャワーの音がその場に響きわたっていた。


「いったい今のなんだよおっさん!」

「さぁ」

「愚弟その2、まずその粗末なものを隠せ」


言われて気づいたが、そうだよな、俺素っ裸だもんな。
せめてタオルくらいまいておけばよかった。
一応言っておくが、俺のは粗末じゃない。

とりあえず先程脱いだしただけでも身につける。

もぞり

赤い塊が動いた。


「ッ、Oh Crazy!」

ザパァッ


Crazyって、正直Crazy言いたいのはこっちだ。


「誰だアンタ」

「お前こそ」

「・・・俺?と若い俺?」

「大当たりだ」

「俺の決め台詞・・・いったいどうなってんだ?」

「それも俺が聞きたい」


いかにも混乱してますというように頭を抱えるビショビショの俺。
見たところによると、若よりもまだ年上とみた。


「あのさ、此処じゃなんだし、むこうで話そうぜ」


若の申し出にうなずき、いそいそと立ち上がる。
周りを見渡せば自分の事務所のシャワールームとわかったのか
さっき降ってきたビショビショの俺も大人しくついてくる。

事務所に入ると、既に事を理解したのか元のソファの位置にいるバージルが目に入った。
後ろから続くビショビショの俺も同様だろう

先に若再がびかけよってバージルを離さないとくっつく。

こいつ明らかに動揺している。
いや、そんなの俺が言えた話じゃないか。


「バージル・・・」

「・・・また愚弟が増えたのか、いい加減にしたらどうだ」


刺がある
いや、コレが普通だっけ。
たぶんネロがここを発つまでの間、あの怖い怖い鬼いちゃんがネロに甘かったのが焼き付いてるせいだ。

それはもう、坊やが俺に突っかかればやつは加勢してくる。
家事を手伝う素振りまではしなかったものの、暴れもしなければネロに対してきつい言動もなかった。
ある意味恐ろしい。


「ふっ」

「何を笑っている、髭」

「いや、なんでもない」


とりあえず、俺の後ろで苦い顔をしてそっぽを向いているビショビショの俺をどうするかだ。

そこまで世話焼きというわけでも、優しいというわけでもない俺が
わざわざ構うこともないんだろうが、な。



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