冗談じゃないエイプリルフール
「これはどういう冗談だ?」
事務所内にはそれぞれのスタイルでくつろぐ俺達
なにもない、ほんと普通のありきたりな日のはずだ
なのに、ただ一人、この部屋にイレギュラーがいた。
「Hello おっさん」
髭の目の前にはネロ、が居たはずだった。
「いや、お前誰だよ」
思わずソファで寛いでいた若がツッコむ。
魂の根源を意識して見る限り、ネロなのは間違いがない
しかし、何か違う。
そう、しいて言うならば成長している。
声も少し低くなり、背に携えるオーラも知的で幾度もの死線をくぐり抜けてきたものだ。
年だってもう、20代後半に見えなくもない。
ソファの脇に立っていた初代が若に問いかける
「若、クイズだ。ネロはこんなやつでしたか?」
「No」
「貴様は誰だ」
若の即答の後にバージルが強い眼光を飛ばした。
「父さ・・・いや、アンタならわかると思ったんだけどな」
「マジでネロ?」
若が問う。
「Yes」
いや、どうしてこうなった。
「まぁ、アンタたちの知ってるネロは今頃俺の時代にいるんだろうけど」
「ならば貴様は未来の、もしくはパラレルワールドのネロだというのか」
「そういうことだ」
そうシレッといいのけて周りを見渡す。
未だに半信半疑である俺達、といっても俺達がこうして此処に集っている時点でキャパがギリギリだというのになんてことだ。
いきなり未来だの過去だのの己だという奴が現れても「はいそうですか」と簡単に解釈はしかねるだろう。
俺達だって最初はそうだった。
「それで、未来の坊やは此処に何のようだ?」
「あぁ、ちょっとした遺言」
「遺言!?」
”坊や”といっただけでイライラと怒らなくなったぶん成長がみられる。
「そう、ちょっと父さんから」
「!」
その言葉にダンテたちが固まった。
”父さん”
ならばコイツの世界には父親がいるということだろう。
というか、遺言ということは死んだ・・・ということだろうか。
「此処に、ダンテが来てないか?」
ダンテ、と言われて皆がダンテなので顔を合わせる。
いったいどのダンテのことなんだ、と言いかけてただ1人に絞られることに気づいた。
その時ちょうどキッチンのほうから2様が現れる。
そして出てくるなりネロを視界に入れて固まった。
「・・・・・・」
「おっさん、魔界から帰ってこないと思ったらやっぱり此処かよ」
2様がジッと見つめ、それに返すように挑発的な笑みを未来のネロが浮かべる。
「ネロ?」
「あぁ」
「何で此処に」
「閻魔刀使った」
「・・・」
最年長の2様と未来のネロの間にすごい威圧感がある。
初代なんて口元をひきつっている、そのくらいすごい威圧感だ。
あの純情坊やがこんなんになるなんて、目をつむっていたい。
髭がため息を付いた気がした。
「父さんから遺言だ」
「、、遺、言・・・?」
「遺言」の言葉で2様がものすごい勢いでネロに迫った。
「どういうことだ!!!!」
いつも一番クールでいる最年長がここまで感情を露わにして怒鳴っている。
皆が目を見張った。
「そんな魂じゃないだろ、アイツは!」
「そんなの、俺が言いたい」
「ッ、、」
息を飲んだ。
若が、無意識にバージルの服の裾を掴む。
「『先にかえる、お前は楽しんでこい』」
「・・・」
「確かに伝えたからな、じゃ」
「まて、俺も戻る」
戻る、この事務所から2様が居なくなる。
ここまで一緒に過ごしてきて、バカやって、そしていなくなる。
なんだか寂しい、こんな気持ちほんとうに久々だ。
さすがは皆ダンテというか、それぞれが渋い顔をする。
「残念だが、閻魔刀はお一人用だ、アンタも知ってるだろ?」
「そんな、」
「じゃ」
「待て!!」
2度目の静止を聞かずにネロの右腕が強く光ったと思うと、そのまま消えた。
そして、そこに同じように立っていたのは、俺らが今までに見たことのあるネロいつものネロだった。
未だに状況が理解出来ないのか、きょろきょろとしている。
「なんだったんだ・・・今までの」
「おかえりネロ」
とりあえず髭が声をかけるとハッとした。
「帰ってきた・・・のか?」
「どうやらそうみたいだな」
そしてネロが重い雰囲気に眉を潜め、そしてバージルを見て首をかしげた。
うつむいてる2様に初代が近寄る。
「おい、2様」
「・・・・」
「大丈夫・・・じゃねえよな」
「・・・・」
「また俺は、アイツを手放した、また!!」
ギリリと歯が鳴る。
その思い空気に、ネロが「あ」と思い出したように行った。
「なんか、伝言頼まれたんだけどさ」
デジャヴだ。
確実なるデジャヴ。その言葉に2様の肩がこわばった。
「ハッピーエイプリルフール」
「「「え」」」
いや、たしかに今日は、4月1日エイプリルフールだ。
いやいや、まさかと思う。
「なんか、もっと年食ったバージルみたいな奴に帰ったら伝えろって言われたんだけどな」
「本当か?」
「え、あ、あぁ」
「この愚弟共めが」
皆が唖然とする中ただ独り、バージルだけが呟きと共に読み途中になった本に再び目を落とした。
「はぁ、、」
2様がうなだれてフラッとなり、初代に寄りかかる。
うおっと、変な声を出しつつもしっかり支えるところを見ると、それなりに紳士だ。
いたずらっぽく、ネロは言う。
「ってことで、ハッピーエイプリルフール!」
何処か遠くの違う世界の未来。
とある親子がしてやったりと、ニヤリと意地悪く、笑った気がした。
※此処の未来ネロはプロトタイプネロ(資料集参照)を4ネロと足して2で割った感じだと思ってます。
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