髭は外、鬼は兄



「鬼はーそと!副はーうち!」

「痛っいてて、地味にいてぇ!」


事務所机でいつものようにアダルト雑誌を読んでいた髭に突如降りかかったのは
とてもとても小さな豆だった。


「バージルが投げろってよ」


投げた張本人である若は、悪びれもなくそういった。


「なんだ?新しい遊びか?」

「日本の節分というらしい」


キッチンの方から香ばしい香りのする大きな袋をかかえた
バージルが、説明を足した。


「セツブン?」

「こうして鬼に豆を投げて祓い、幸せを家に呼ぶらしい日本の行事だ」

「ずいぶんとクレイジーな伝統だな」


炙りたての豆を小脇に抱えたバージルは、それを思いっきりつかむ。
ちなみに当の本人は軍手基指先まで隠れた初代のグローブをきっちりとはめている。


「やるぞ愚弟」

「OKオニーチャン!」


バージルと若による豆の総攻撃が襲う


「ちょ、まてまて、おまえら!」


避けるほどのものでもないが、当たると地味に痛い。
まぁ、へっちゃらなんだが、気になる程度にはやっぱり痛いしむず痒い。


「日頃の恨みとくと味わえ!万年金欠鬼は外!!」

「この間俺のストロベリーサンデー食っただろ!奢れ!福わ内!」


この理由で今俺は豆という地味な攻撃を受けているというのか・・・。
この際誰でもいいから事務所に来てくれないものだろうか。

だが、運が悪いことにネロと初代は悪魔狩りへ。
2様は自室だが、既に雰囲気を察して降りては来ないだろう。

その時高らかに銃声が響いた。


ダンッダンッダンッ


3発に聞こえるが一度に何度も連射しているので合計は数十発。
其の豆が髭の顔スレスレを通った。
まぁ、正確には髭がスレスレになるように避けたんだが。


「坊主、何故弾をエボアボに詰めるんだ?」

「こっちのが俺っぽいだろ?」


質問を質問で返し、再び豆をエボアボにつめ、本気でこちらを狙ってくる若。


「バージルにいたっては、それもうベオウルフじゃねぇか!」

「安心しろ、豆はまだ握っている」


豆を握ったままベオを装備し、殺気を帯びて蹴りかかってくるバージル。


「オイオイ、勘弁しろよ」


世界のどこにこんなクレイジーな節分があるというのだろうか。






「たまにはガキと遊ぶのも悪くないかもな」


その言葉にピクリと反応する2人。
そして髭が口元を釣り上げた。


「C'mon! Twins!」






この後、帰ってきたネロに部屋の荒れようと豆の無駄遣いに鬼の形相で絞られ、
掃除と修理を任されたのは言うまでもない。




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