フロッグ・パニック




雨が降っていた。

暫くの間振らなかったため、久々の雨振りに初代は空を見上げる。

「雨」といってあまりいい思い出はないものの、特別欝になったり嫌気がさすわけでもない。
むしろジャパンでは雨音を聞くのを”フウリュウ”というらしい。

窓の脇にはこの店に似つかない観葉植物が、其の雨を羨ましそうに見ていた。


そう、何気ない一時。
近くの窓辺で蛙が鳴いた。


「なんだ、お前?」


鮮やかな緑色をしたアマガエルがこちらをじっと見ているのに気づき初代は蛙を見つめ返す。
少しだけ窓を開けるとその隙間から入りた安く初代の頭の上に飛び乗ってきた。


「動物にもモテるとはな」


ハッっと鼻で笑うと蛙も同調するようにゲコッと泣いた。
なかなかの愛くるしさに蛙をそのままにしてキッチンに向かい、コーヒーを淹れる。


ガシャンッ


その時だった、大きな音が響いたのは。


「か、」


ふと見ると冷蔵庫へと飲み物を取りに来たであろうネロが盛大に牛乳パックを落としていた。
心なしか顔が青く見え、眉間のシワが何倍にも深く見える。


「か?」



「カエルァァアアア!!!!!!!!」


「!!??」


いきなり自分に向かってスナッチを出したネロの顔は冷汗がつたっていた。
初代はそれを間一髪で裂ける。


「オイオイ 落ち着けネロ」

「なんでそんなもん連れてんだよ!!」

「はぁ?」


今にも中指付きだして「××××!」って言いそうなネロに一歩後付さる。
これじゃ俺がまるでヘタレのようだ。


「何って、何?」

「その頭の上だよ、上!」


頭上には未だに蛙がのっている。


「何だ坊や、蛙嫌いなのか?」

「あんたと若にだけは”坊や”言われたくなかった・・・」

「まぁまぁ、さっき窓開けたら入ってきたんだぜ」

「Oh my god!」


頭を抱えてうなだれるネロに少し同情する。
俺達なみではないが悪魔を軽々狩っていくコイツがこうなるとは。


「楽しそうだな」


そう言われキッチンに入ってきたのは2様。
髭が入ってくればからかわれるだろうが、まだ2様でよかったとネロは心底安心する。


「あぁ、ネロが蛙嫌いなんだってよ」


そう2様にの方を見た瞬間蛙が2様を避けて必然的にネロのほうに跳んだ。


「きめぇぇ!!!」



バンッバンッ


刹那だった。跳んだ瞬間ネロのほうに着地する前、蛙めがけて鉛玉が飛んだ。
瞬間とても言葉で表すとグロ指定になるようなものが飛び散り蛙が床に落ちた。


「こりゃ酷いな」

「うわぁぁああああ!!」


足元には正確に狙われた残骸

しかしそれに目もくれずネロは辺りに飛び散ったものがかかったのか、慌てたように暴れまわり・・・


バンッバンバンッバンバンッ


発砲しまくっている。



こんな坊やみるの始めてだ・・・。


「はぁ、ネロ」


そこに一部始終を黙ってみていた2様が口をだした。
蛙をまたいでネロに近寄り、一度頭に手をおいた。


「あの蛙は髭だ。そう思ってみろ」

「え」


なんのことかと思うと、髭。

あの潰れた蛙が髭、髭、髭。


「髭・・・」


そう呟いたネロは大きく深呼吸をして、何故か清々しいような顔をした。

ある意味初代にはそれが怖かったのだが・・・


「いいのか、それ」


そのままネロは事務所のほうに戻っていった。
その場に残された初代はまるで嵐が去ったようだと思う。


「いいんだ、あれで」


そう言って2様はふと笑った。

今思ってみればこいつは一番最年長、一番未来にいるダンテだ。
ネロの扱い肩は心得ているのか知らないが、たぶん一番事件への対処法を人生豊富なぶんわかってる。


「昔からそうしていたからな」


そう言って自嘲気味に笑った2様がどこか儚く見えた気がした。
そのままキッチンの外へ出ていった2様。

一人になった初代は、「髭」と名付けられた潰れた蛙を見て


「すまない、運が悪かったな」


そう言って、眉を下げた。

蛙に罪はないのだ。





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