酒乱正月日和にて



「A HAPPY NEW YAER!!」


その掛け声と共にパパパーンっとクラッカーの爆ぜる音が聞こえる
去年もその前も髭であるこの家主のダンテ一人だったこのDevil May Cryでは、今年は一味違っていた。


「フゥゥウウーーーー!!イェア!!!!!!」

「うるさいぞ愚弟が」

「いいぞ〜もっとやれ!ヒューヒュー!!!」

「おう旦那、もう一杯どうだ」

「そうだな、貰おう」

「初代急かすな!!2様も止めろ!!」


まだ日付を超えてすぐだというのに、この騒ぎよう。

それは今日の夕方にまでさかのぼった話であり、実はバージル提案のジャパンのオセチ?
を作るので珍しく家事担当の2人で買い物に出かけて帰ってきてからずっとこうなのである。

既に酒盛りを始めた年長組に対し、若はテンションが上がっているのか知らないが
部屋中を暴れまわり、初代も何かワクワクとした目でそれを見ている。

その状況を見たバージルが


「はぁ・・・またか」


その一言で、これはもしかしたら昔からなのかと察した。

よくもまぁ日付またいでまでこのテンションが続くとなると、ある意味恐ろしいとネロは感じる。

一番の恐怖がさきほど此処まで飲み続けるほど、酒に強いあの2様が酔った勢いでか
どこから出したのかわからない2様お得意のミサイルランチャーをぶっ放したことだ。

ダンテたちのテンションも此処まで来てさらに一気に上がった気がした。


2様曰く「ついノリで」


若が放たれたミサイルランチャーにサーフボードのように乗り、部屋中を飛び回る。

そのまま事務所のドアに正面衝突して爆破しながら外に飛び出していった。

いや、あんなことで死なないから心配もなにもないんだが・・・。
この事務所がスラム街の入り組んだ街の突き当りにありそこから一直線に道が開いているので建物に当たることも・・・たぶんないとおもう。

とりあえず壊されたドアをそれなりに立てなおして、ネロは大きくため息を付いた。


「流石に愚弟が4人となると、面倒だな」

「あんたも大変だったんだな」

「慣れた」

「なるほど」


そういったバージルは冷たい目線でダンテ達を見るに、その中に懐かしむような、どこかしら楽しそうな彼にネロも


「そういえば性格違ってもアンタも双子だもんな」と方をすくめた。


仕方ない、夜遅いし俺はもう寝ようかと思う。

教団では規則正しい生活を長年続けてきた成長期の身体にとって、眠いものは眠いのだ。

自分の部屋へ行こうと意識を逸らそうとした時、不意に首に何かが絡みついてきた。


「フフ〜ン!ネ〜ロッ!」

「臭ッ!!酒くせぇ!!離れろおっさん!!」

「オニーチャンとばかりお話とは妬けるねぇ、ぐふッ」

「腐ってろ」


そう言って鳩尾を肘で殴るが、やはりダンテだけあってビクともしない。


「初代ちょっと外から若つれてこい」

「OK」


いそいそと若を連れ戻しに行くと扉前で鉢合わせしたのか、すぐに戻ってきた。
若の恰好はコートの裾が焦げているくらいで他になんの外傷もない。


「2様、これは何を?」

「みなで飲み比べだ」

「はぁ!?」


そのソファの横にはいつの間にあったのか、大きな樽。

以前ダンテが通っていた酒場で飲み比べの際に使用していたらしく
そこの店主が自家製していたものを、懐かし半分で2様が作っていたらしい。

バージルがそれを見た途端凄い嫌そうな顔をしたのは・・・まぁツッコマないでおこう。


「マジかよ」


酒臭さと眠い中半ば強制にソファの周りに見が集まると
その大会は始まった。


「一気!一気!」

「オッサンがんばれ!」


ちみに、この酒アルコール濃度が異常に高いらしく見ているだけで酔いそうになる。


「うわっ久々だな、この感覚」


そう言って懐かしいとか言いながら順番に飲んでいく。
ダンテ全員が飲み終わるころには既に見な目が座っていた。


「次、バージルいけ!」

「却下」

「なんだ、オニーチャンは昔が怖いってか?」

「強制に飲まされたいのか?」

「いくじなしだぜバージル」

「ッ!」


若の「いくじなし」のその言葉にキレれた。


「ふざけるな!!」


ジョッキに並々と注がれたその特性の酒を眉にシワを寄せて飲み干す。

バージルは一度うつむいた後、案の定そのまま其の場に気絶した。

一応確認しておくがこの中でめっぽう酒に弱いのはバージルである。
別に弱いと言うよりは、飲み慣れていない。のほうが正しいのだろうが・・・。

さきほどから飲むたびに喉仏が上下するのは既に見慣れたネロは、周りが騒ぎ立てる酒よりも眠気と戦っていた。


「次ネロだぜ」


そういって空になったジョッキを渡される。


「無理無理無理無理、俺未成年だし!!」

「俺達も通った道だ、やれ」

「はぁ!?」


いつもより髭の口調がキツイ気がする、2様のような・・・。
というか目が据わってるのにニヤケ顔で怖い。
市松の恐怖を覚えてネロは一度生唾を飲んだ。


「ネロ?」

「お前ならやれるさ」


そんな事言われても無理なものは無理だろ。
どんなアルコール中毒だよ。


おっさんたちは半人半魔なだけあって中毒に成ることはないが、俺はどうだか。

右腕に悪魔を宿してるし、フォルトゥナの件の時一度刺されても死ななかった記憶はある。
しかし、こういったものに効くかも分からない。いまいち確信が持てないのだ。

ふと顔を上げると、またもや不意に・・・しかも今度は羽交い締めにされた。


「離せ!!」

「若!」


ふざけんなと言いたい。
バージルは倒れただけでよかったが、酒なんて飲んだことのないこの身体が何をしでかすかわからない。

羽交い締めにされたまま、若に口を無理やり開けられた


「いてぇ!!頬骨折れる折れる折れる」


そのまま口に流し込まれた酒の臭いと独特の味に一瞬目の前が真っ白になった。

目の前に火花が散るようにチカチカする。
そのままネロは意識が途絶えた。







これは後日談であるが、元旦の昼、若曰くあの後大変だったと爆笑された。


「なぁ、オッサンが俺を避けてるように見えるんだが」

「仕方ないだろ」

「だな」


2様と初代も目を合わせるて頷く。


「はぁ?」

「実はな、」



――――――



あのあと、ネロがいきなり無言になり、ゆっくりと悪魔の手で口元にあるこぼれた酒を拭った後、沈黙が続いた。

さすがにやばかったかとオッサンが声をかけると


「おい坊や」


ガタッ


そのまま視界が暗転したらしい。


「オッサン、そんなに犯されたいのか?そうかそうか」


ニヤリと口元が歪む。
そこにはそりゃもう、妖艶でいて目の据わった鋭い眼光を飛ばすネロがいたそうだ。

思わず其の場の空気が固まった中で、2様だけが深く息をついた。


「坊や正気にもどれ」

「アンタだろ?俺をこんなんにさせたのは、”責任”って知ってるよな」

「ちょ、坊やっ」


そのときいち早く2様が反応した


「逃げるぞ」

「え」

「R指定ってことか」

とりあえず、既に倒れてるバージルを担いで若初代2様の3人は、2階への階段の方に逃げこんだ


―――――


「そこからはまぁ、ご想像に任せよう」

絶句

「OMG!!!」


最悪だ、最悪すぎる。

穴があったら入りたいとは、まさにこのことだ。
通りで髭が怯えたように逃げるわけだ。

そして若の大爆笑の理由もわかる
バージルに見られてないのが救いなのかどうか知らないが、とにかく、新年早々しでかした自分が恥ずかしい。


「ネロ」


そこに声がかかった。


「A HAPPY NEW YEAR」

ネロは「どんな意味の明けましておめでとうだよ」と小さく悪態をついた。

でも、こんな騒いだのは何年ぶりだろうか、こんな正月もたまには良いかもしれない。
もういっそのこと来年もまた再来年もこのメンツでいればいいさ。

そう思ってネロは皆には見えないように納得したようにはにかんだ。



ちなみに、バージルは未だ二日酔いで寝込んだままである。





[ 14/34 ]
[BACK] [NEXT]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -