#03 More than enough.


「お前、ちゃんとヒーローの教育してもらったのか!?」

「そんなこと別にいいだろう、自分流だ」

「ふぅん、そりゃあ扱いづらいことで。」

「・・・何が言いたい」



用意された客間を出て別室へと移動。

2人の中がギスギスとしている中でタイミングが良く右腕に付いているブレスレットが光った。

今までまとっていた空気が一変し一気に真剣な顔つきになる。


『ボンジュール、LUCIFER&SARIEL』


突然通信が入ったと思うと画面が表示されそこには、ルシフェルにとってはいつかどこかで見たことのある深蒼の髪の男がいた。

自分と瓜二つな顔が並んでいるようにみえるため、相手側は長い髪で顔を隠すようにしている。

間から覗いた白い肌と赤い瞳がルシフェルの同じ赤い瞳とぶつかった。


「・・・兄さん」


そう、ルシフェルの双子の兄であり今ではどこかで取り上げているTENKAITVなるものの企画を立ち上げ進行するうちの一人。

サリエルはまたルシフェルから出たの「兄」という意外な単語にびっくりした。

サリエルは画面を見たとたん美人さんだとテンションも上がったが、男でしかも横にいる扱いづらい男の兄。

信じられないという顔をスーツの中ではしていた。


「今回の事件は人形が勝手に動くという事件だ。
確認されているだけでは首謀者は少女。
何のために、どのようにこんなことをしているかは検討がつくようで確信もない。
今では何千体もの人形が動き始めている。君たちにはこの少女の保護と、この事件の深層を確かめてもらいたい。
ちなみに、相手が小さな人形だからって見くびるなよ?」


長々と知らされた任務内容は不可解な事件。



「初めて二人の出動、大丈夫かい?」


目の前の兄は今の状況をわかっているかのように話す。
まぁ、これだけギスギスした空気なのだから届いてしまったのだろう。

それにすかさずサリエルは答えた。


「あぁ、その件は私一人で十分」

すかさずルシフェルが反撃した。

「それは困るな」

サリエルも引かない。

「旧ヒーローなんてカッコ悪い、第一そんな人間といたら女の子がこなッッッ」


ガッッ


突然ルシフェルはサリエルの胸ぐらを一度掴むと身体とは合わない力でソファに投げつけた。

瞬時に手首を拘束され身動きがとれない。


「どけ!!男に上に乗られる趣味なんてものは無い」


睨み返して見えたルシフェル目は赤く怪しく、そして本気の怒りを宿していた。


「私達は、女やポイントのためにヒーローをしている訳じゃない」

「な・・に・・・を」

「私たちは、誰かが助けをもとめているから、ヒーローをしているんだ」


言葉の圧力に負けそうになった。
ぶるりと背筋が震える、これが、殺気というものなのだろうか。

フワッと拘束が解け目の前に見慣れた天井が見えたと思うと、恐怖か何かでわからない冷たい汗を背中が伝い、呼吸を整えた。

ふと後ろを見ると既にルシフェルはいない。


「あの野郎・・・ッ!!」


既に出動しやがった。

どうせ命令された以上コンビとして組むのだから会社の前で私を待っているんだろう。

なら、やってやろうじゃないか。

このコンビ結成認めたわけじゃない、でも・・・






『誰かが助けをもとめているから、ヒーローをしているんだ』






一度だけ信じてみようと思った。









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