1 Call me



「それじゃ、行ってくるよ」

「気をつけてね、ネロ」


相棒のニコの車修理がおわり、フォルトゥナから旅立つ。
キリエに少し長い仕事になりそうだといったら、いつまでも待っていると心配そうに、でも笑顔で微笑んでくれた。

俺が魔剣士教団のはぐれ者だった時代から、時を得て今の人生を歩むなんて
つい数十年前は想像もしていなかった。

偽神事件も落ち着き復興もだいぶ進んだ此処フォルトゥナで
表向きは便利屋、裏ではデビルハンターというスタイルで店を初め数年。
壮大な兄弟喧嘩が勃発し、レッドグレイブ市から魔界化が進められたあの一件も過ぎ去った数ヶ月後。


突然、一本の電話が入った。

「時空を歪ませる悪魔ぁ!?」

そう突拍子も無いことを言い出した電話の主は、俺と同じデビルハンターのいけ好かない赤い奴
ダンテだった。
実際俺を邪魔者扱いしたがる頑固なおっさんが
此処に電話を入れるなんてことをする時点で、それは真剣な話なのだろうし
空間を歪ませて入ったものを迷わせる悪魔は、以前の事件でエキドナなどの話は聞いている。
疑う余地は無かった。
電話の内容は、珍しくも一度ダンテの事務所へ出向けとのご達しだ。

「あんた独りでそんなの片付けられるだろ」

あのおっさんなら悔しいが相手が上級悪魔だとしても遊び半分で倒せるだろう

『それが、そうもいかないんだ』

「どういうことだよ」

『どうも今回は厄介みたいでな、まぁ詳しいことはこっちに着き次第おしえてやるよ』

否定権は無いのか、挑発なのか。
それでも、ネロにとっておそらく上級悪魔と対峙するであろうことは実に魅力的だ。
強い力を求める心が獲物は今か今かと疼きはじめる気がする、血の気が騒ぐ。

ダンテの誘いに二つ返事でOKをだし
俺はそのことをキリエに伝えた。彼女を独りにするのは忍びないが、この復興の進んだ町で
そうそう危なっかしいやつは出てこないだろう。
悪魔が出たとしても、再結成した騎士団……まあ以前よりだいぶ縮小された、騎士団とは名前だけの自警団では
あるのだが、そいつらでも倒せるやつらばかりだ。

そして冒頭に戻ることになる。
これからしばらく”長期任務”でダンテの事務所に出向くことになったのだ。








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