カーテンを勢いよく開くと、視界は瞬く間に白い光でいっぱいになった。



「臨也さーん、朝ですよー!」

「あと5分…あと5分だけでいいから…」

「それ言うの何回目ですか…」



揺すっても一層しっかり布団を体に巻き付けて寝返りを打つ様子に呆れて溜め息をついた。
とある日曜日の朝。
臨也さんは今日みたいに寝覚めの悪い日がある。
なかなか起きてくれなくて困ってしまうけれど、子どもみたいで可愛いと思ってる自分もいたりする。
こういう日は、作りたての朝食が少し冷める頃には絶対に起きてくるってことに最近気づいた。



「正臣くんおはよー」

「おはようございます、コーヒーで良かったですか?」

「おねがーい」



まだ眠いのか間延びした返事に笑いを堪えながらコーヒーを淹れる準備に取り掛かる。
やかんの火を消して、挽いておいた豆にお湯を注いでいく。



「起きるのこんなに遅くて、仕事とかって大丈夫なんですか?」

「いいの、昨日の夜に粗方終わらせたから。」


(だからさ、今日はお休みだよ。)


コーヒーメーカーの音が、静まり返った部屋の中に不思議なくらい響く。





( 気づいたことがある )



臨也さんの寝覚めが悪い日は本当に稀。
でも実は共通点がある。

決まって、日曜日の朝。



「せっかくだし、久しぶりに買い物にでも行こうか?あ、池袋はパスね」

「臨也さん、もしかして…」

「正臣くんの為ならそりゃ、夜更かししてでも終わらせるよ?せっかくふたりで過ごせる休日を仕事に費やすなんて御免だからね」



そう言ってあくびする臨也さんを見つめたまま、俺は動けなくなってしまった。


(どうしよう、どうしよう。)


いま、心臓がぎゅーっと締めつけられた。
だんだん顔に集まる熱に思わず俯く。



「あ、の…臨也さん」

「なあに?」



こちらに微笑みかける姿が想像できる。
顔を上げると、いとおしそうに自分を見つめる彼と視線がかち合って


(どうしよう、)


体の奧が痺れるような感覚がした。



「いや、なんか…幸せです」

「そうだね」



とりあえず朝食を取って、今日の予定を立てよう。
出かけないで、ふたりきりでいれるだけで十分だってことは、勇気を出して伝えたいと思う。



シュガーレス・ラヴ

(砂糖なしのブラックコーヒーに)
(あなたからの愛を甘く感じた)

(砂糖以上の甘さで骨まで溶けそう)





10.09.07






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