「……今年も凄いな」

「僕を愛してくれる人の数だけあるからね!」

ふふん、と誇らしげに腰に手をあてて、嬉しそうに目をキラキラとさせたジェシーの視線の先には、テーブルや、そこに乘り切らず床にまで積まれたファンからの手紙やプレゼントが、まるでクリスマスでも来たかのように並んでいる。
カラフルな箱や封筒、花の数々に、これまでのジェシーの努力を想い素直に感嘆したが、しかし、ジェシーとは正反対にドガの手は顎にあてられ、そして首をかしげている。

「どうしたのドガ?」

「いや、……いつもは君の家に届いたのをここに持ってきていたのに、何故今年は私の家に…」

「僕の家でもあるでしょ」

「まぁ…そうだが…」

「もう一緒に住むようになって結構経つし、いいかなって」

「いいかな、って……君、人気商売というやつだろう…何かあったら…この為に君の家を解約しないでいたのに、」

「でもマネージャーだって迎えに来る時はここだよ」

「うーん……」

「だからここに送ってくれるように頼んだんだ」

「うーん…………」

「大丈夫、堂々としていたいけど、僕だって分かってるよ。マネージャーには友人とルームシェアしてるって言ってあるし、それで納得してる。その友人がドガってことも知ってるから、むしろ安心してくれてるかな」

「そうか……君が大丈夫なら…それでいいんだが」

「任せてよ!」

僕はモデルの仕事も、ドガのことも、諦めないからね!
そう言って腕まくりをして、プレゼントを子供のように開け始めるジェシーに苦笑いして、ドガは包み紙を拾い集める。
包装紙に書かれた祝いの言葉、応援の言葉、愛の言葉に、ジェシーは声を出して一人一人に話し掛けるように礼を言い、愛しそうにその文字を撫でていく。

「あ、それ、捨てないでね!メッセージのところは切り取ってファイルに入れるんだ」

「そうか、それは私も手伝おう。粗方済んだら今夜は外で食事を。店を予約してある」

「デート!?」

一番大きな箱を抱えたジェシーが、目を丸くして、口を最大といっていいほど開けて嬉しそうにするのを見て、ドガは思わず吹き出す。
隙の無い大人のように、紳士的に振舞う日もあれば、今日のように、遊園地に行く日の子供みたいに無邪気にもなるジェシーに、ドガは、自分一人がここまで夢中になれる人間を、世界が放っておく筈はないのだな、と、今更、頭で考えていたのとは違うところで、ジェシーの仕事を理解した。
彼のいない世界はつまらない。それを、これだけ多くの人が知っているのだ。様々な色の中に居て、それでも埋もれず、曇らず、ひと際輝くこの男を。
けれど、それだけ多くの人さえ知らないのだ。今だけはこの部屋の中で、ただ一人の言葉で、誰も見たことのない笑顔で居ることを。






×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -