(っクソ、こんなもん入れやがって…)

ダウンタウンのお世辞にも綺麗とはいえない路地裏で、太陽を避けてひんやりとした、廃れた店の壁に寄りかかり、ジャドは何かを必死に耐えている。

(あのハゲ…覚えとけよ……)

趣味の悪い男に、時折、邪な視線を向けられることは、ジャドはこれまで幾度か経験していた。数ヵ月前、上司に、今月中に最低でも三件は契約をとってこないとクビだと脅され、あんなにも嫌っていたその手を使おうと思ってしまったのが間違いだったと、今更ながら後悔した。

(てめぇのモンに自信がねぇからって道具にばっか頼りやがって)

何より、身体が同じ男によって暴かれているというのに、思っていたほどの苦痛を感じなかったという衝撃が、後悔を一層大きくしている。人に対する嫌悪感はあれど、行為には然してそれを感じなかった。男相手に好みも何もないが、やはり生活のだらしなさが顕著に表れた肉体や、気色の悪い言葉や気味の悪い息遣いには未だに慣れることはなく、むしろ殺してやりたいと思うほどだった。が、如何せん、身体が頭で思うようには動かない。快楽に弱い自分には出来れば気付きたくなかった、とジャドは店のものらしいゴミ箱を八つ当たりで蹴り倒す。
さっさと自分の中の異物を取り出してしまいたかったが、自分の指では届かないほど奥まで入れられた為に、それはかなわない。一度、近くにあったダイナーに寄り、レストルームで下腹部に力を入れてみたが、動く気配がないどころか気を緩めた途端に振動で更に奥へ進んだ気配がして尋常ではない冷や汗をかくだけで終わってしまった。明日までそのままでね、と厭らしい笑みで事務所から送り出されたジャドは、どうやら本当にその通りになりそうだと、恐々とした。

歩くごとに意識せずとも力が入り、その都度反応してしまう身体がモノを締め付けてしまうことに疲れて、ジャドはタクシーをひろう。乗り込んでまた後悔したが、乗ってしまったものは仕方がないと行き先を告げ、気持ち腰を浮かせて、必死に、今この状況とは関係のないものを考えることに集中する。これが上手くいったのか、それとも必死過ぎて気付かなかったのか、次に運転手に声をかけられた時には、もうペルゴラの前に着いていた。
金を払う際に何故か手を包むように掴まれ、ニヤニヤと気持ちの悪い目で見られたが、それを振り払うだけの気が残っていたのは幸いだった。








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