バレンタイン。おれは散々だった。
今、屋敷の台所でこんこんと説教されている。凜久に。


「だから、なんでこんなことしたんですか?」
「いや、その・・・・・・」
「慣れないことはやめてください。心配です」
「あの、だから・・・・・」
「伊紅くん、聞いてるんですか?」
「・・・・・聞いてます・・・・・・・・・」


台所は悲惨なことになっている。
壁はチョコまみれだし、とりあえず形容しがたい状態になっている。凜久に怒られたことなんてないこともないけどこんなにも説教されたのは始めて・・・・かもしれない。
おれはどうしても、バレンタインをやりたかった。普段は言えなくても好きって言葉を形にしたかった。改めて言うと怖いぐらい恥ずかしい話だが、恋は盲目。


「もう、やめてくださいね」
「・・・・やらない」
「まずタマゴをレンジでチンはできませんからね」
「・・・・今日覚えた」
「あなたが料理なんて、しなくていいんですから」
「凜久」
「はい?」
「料理がしたくなるほど好きなんだけど」
「・・・・は?」
「バレンタインのせいだ」


そうだ、こんな気持ち、こんな日のせいだからだ。




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