【301-310】

アガメムノンの娘の様に

白鳥は死に際に最も美しい声で歌う(聴かせておくれ、その清澄たる断末魔を)

とめどなくあふれて、

良心を持たぬマクベス(もう誰にもその殺戮を止められはしない)

修羅道を越えた先にて待つ

オフィーリアの晴れぬ憂鬱(愛する人よ、どうして狂ってしまったの)

信じるだけで救われるなんて有り得ない

異端邪説を排斥せよと裂帛の叫び声を上げた

海底のアトランティスに蕩けた

白金の甲冑を身にまとい(いざ、死地へと行かん!)


【311-320】

過ちを繰り返す愚かなイクシオンは燃え盛る車輪の中に

そういわれるとよわいんだよなあ(なんて、わざとらしい)

悲劇だと誰が決め付けたんだい

下らない理屈を列挙した所で、世の中何も変わりはしないのだよ

おお、アレルヤ(私の神は貴方です)

三秒の復讐劇

羽衣を取り返せなかった天女

世界平和に必要なもの、それは、(全世界共通の大敵、だと思うんだ)

アドニスの美貌はまさに罪であった

あの日夢見た終焉がこんなにも呆気無いなんて、(私は認めないわ!)


【321-330】

枯れた沈丁花から香りはしない

えら呼吸人間(いや、それって、もう人間じゃないよね)

夢見がち少女の剣呑な半醒

過ぎた自己陶酔に死したナルキッソス

なあに、かんたんなことだよ

ただ、あの蒼い海に還りたかった(それだけだったんだ、なのに、)

ダンス・マカブルの無限ループ

毒を食ろうても皿までは食えぬ

A子さんはB君が好きでB君はC子さんが好きでC子さんは、(結局、誰も報われない)

赤銅色に浮かぶ屈託の無い微笑


【331-340】

ニブルヘイムに迷い込んだが最後

僕の思う愛を他人は殺意だと言う(何故だろう、おかしいなあ)

エゴイスティックガールの懸念事項(どうしても心配なのよ!)

空を飛ぶ妄想

デイアネイラの過失致死罪(贖罪はその命を以て)

切り落とした黒髪には、もう未練なんて無いのです

さいぼうさえいとしい

丸腰のチェイサーと完全武装したランナウェイ

傷口を押さえながら痛いかって嬉しそうに訊かないでよ

剣はダモクレスの頭上に落下した


【341-350】

唖子夢の幸福と覚醒時の幾許かの虚脱

かひなを伝ひ落つるくれなゐ

鏡に向かって繰り返した問いの答は誰も知らない(お前は一体、誰だ)

僕が見失った自己を見付けたのは僕ではなく、

ドグマに内包されし深き陥穽に堕つ

宛ら朝の露のやうに

ソリティア、こっちへおいでよ(部屋の隅で膝抱えていないでさあ)

透き通る黎明の風が誘う

君の為ならば、太陽だって叩き落としてみせよう

毒に犯されしオリオンの悲哀



next